マルチカルチュラリズム
様々な文化的、社会的、政治的差異を持つ人びとを制度的不平等感を与えずにに共生させることは可能か――この問いに対して世界の第一線で活躍する研究者が深淵な議論を繰り広げる。結論を再起に言えば、可能か可能でないかではなくて「わからない」というのが本書を読んだ結論である。しかしこの「わからない」という結論を出すまでの現実分析の鋭さや、解決のための仮説への批判や支持の応酬などの険しい道のりこそ、本書の醍醐味である。ただハーバーマスの議論がわかりにくいという点を除けば、知的ごろつきには刺激的な本であることは間違いない。
レスピーギ:ローマの祭り
ロリン・マゼール指揮クリーブランド管弦楽団の1976年録音のレスピーギは、個性的な響きに裏打ちされた既成概念に囚われない解釈なのだが、なんといっても随所に重ねられたパイプオルガンの低音の響きが、他の指揮者の演奏するディスクのおよそ2倍くらいの大きさで響いてくるというところだろう。その結果「こんなところにもパイプオルガンが」という驚きをたっぷり味わうことができる。しかし、それ以外にも「祭」の「十月祭」でのキビキビした弦楽器や、「松」の「ボルゲーゼ荘」での打楽器の響きなど、ジョージ・セル薫陶の影響がまだ残っているクリーブランド管弦楽団の妙技を聴くことができる。……「金鶏」も二曲目のいかにもロシア臭い雰囲気など、なかなか楽しめる。