九ちゃん刀を抜いて [DVD]
この作品の脚本家・城のぼるはどの検索で調べてもこの「刀を抜いて」しか出てきません。
でも実はこの城のぼるは故・岡本喜八監督のペンネームです。
東宝の次郎長三国志シリーズで故・マキノ雅広監督に助監督でついた岡本監督が師匠のために会社を飛び越えて協力したコラボレーションなのです。
残念ながら岡本監督は生前あまりそれを公言しませんでしたが、これは紛れも無い事実でこの作品を楽しむ一要素になるでしょう。
岡本監督はこれで九ちゃんを気に入り後の作品でお婆さんの役で起用しました。
ぜひ広がる喜八ワールドを楽しんで下さい。
岡本一平漫画漫文集 (岩波文庫)
岡本一平は岡本かの子の夫であり、あの岡本太郎の父である。彼は、世相風俗漫画家としてデビューしたが、漫文を薦めたのは夏目漱石であった。
漫画家になる前は朝日新聞記者であり、甲子園球場の「アルプススタンド」の名付け親でもあった。
本書には大正から昭和にかけての代表作を収めているということだが、すべてがおかしく、その漫文すべてが興味深い。その可笑しさは読んで楽しんでもらうのが一番である。
編者による「年譜」が充実している。巻末に掲載されている一平の墓がどこかで見たことがある例のあれ?・・・・・
一平 かの子―心に生きる凄い父母
岡本太郎のドラマが放送され、毎週はまって観ているが、父母の一平・かの子についての知識がなかったので、興味がわいて読んでみた。
ドラマ以上の一風変わった夫婦・親子関係と、壮絶な日々を送っていた事に驚く。
本書は、岡本太郎が生前に、各雑誌・新聞で父母について書いたものを集めた一冊。
巻末の初出一覧で見ても、各年代にわたって相当数の書籍に掲載されたので、重複して描かれている部分がいくつかあり、その点で★4にした。
私が、岡本太郎を知ったのは、大阪万博の頃。
それ以降、TV、CMに頻繁に出演していた岡本太郎の印象は「ものすごく変わった人」。
しかし、本書を読むと、それほど変わった人ではなかったように思えた。
子供の時に何度も学校を転校しており、大人の欺瞞や矛盾を許せない純粋さは、母親譲りだったと見受けられる。
太郎が語る母・かの子は、童女のように純粋で芸術に熱く生きる人、実生活を営む能力は全く欠けていて、外界からの誹謗中傷にいつも傷ついていた人。
父・一平は、妻・かの子が芸術に心底力を注げるように、慈父のごとき愛で支えた人。
一平がかの子を支えていく決心をしてからは、一般的な夫婦生活とは異なる道を歩んだ点にも驚いた。
太郎が父母に感謝している事は、世間一般の父母としては二人とも失格だが、常に同等の友人のように扱ってくれた点だと記している。
また、母が亡き後に、父が再婚した継母と腹違いの弟達の生活を、戦後、太郎が支えたという点は初めて知った事。
太郎が「誤解のカタマリみたいな人間こそ、すばらしい。純粋であり、純粋だから誤解される」と、母を論じた一節が心に残った。
一平、かの子の写真、作品の写真等も、多く掲載されている。