瑠璃でもなく、玻璃でもなく (集英社文庫)
硬質な美しさと、どこか曖昧な柔らかさを合わせもつ
タイトルと表紙絵に惹かれて、
著者の作品を初めて読んでみました。
ドラマをみているような気分で一気に読みました。
それぞれの立場にある男女のリアルさと、
(個人的に友章だけは何を考えているのかよくわからなかった)
小説らしくうまく計算されたハプニングの設定、
ドロドロした絡みのわりには、それぞれの落ち着き場所が
「きれい」にオチて描かれていました。
たしかに、
「不倫」の美月と浮気をした「朔也」がうまくいくなんて許せない、
といわれても仕方ないが、
もし英利子に子どもがタイミングよく授かっていても、
その後子育ての過程であのお姑さんとうまく折り合えたか・・・
それぞれのキャラの描き方が、都合よく単純すぎる気もするけれど、
それだけに意外と深い真実をついているおはなしだとも読める。
人間関係、環境が作り出す悲喜こもごも、タイミングの妙、
こんなにきれいにまとめてしまった結末に、
かえって人生の面白さを味わえたので☆四つ。
孤独で優しい夜 (集英社文庫)
自分の親友が、好きだった彼と結婚した。
でも、実は、その彼も自分のことが好きだった。
キューピッドとして間に入ってくれた親友に、2人ともだまされていただけだった・・。
そこから、主人公が、彼を奪い取ろうとする復讐劇が始まります・・。
でも・・・。いつまでもはっきりしない彼。
妻のことも大切にし、家庭は守ろうとする。
上司に仲人をしてもらった以上、簡単に別れることもできない。
結局、ありきたりの不倫関係を続ける二人ですが、その結末は・・・??
「瑠璃でもなく、玻璃でもなく・・」もそうでしたが、この人、ホントに不倫している女性の心理描写が巧みですね。
たぶんご本人も、相当経験があるんでしょうね。
私自身は経験がないので、ピッタリとは重ならないけれど、それでも「どうやっても、自分のものにはならない彼」「一人で過ごす時間の切なさ」・・・みたいな悶々とした描写には、うなずくことばかりで。
それにしても「男の狡さ」には毎回辟易しますね。
本当に、不倫している男にとって、女って、都合の良い存在でしかないのね・・と、悲しいけれど思ってしまいます。
最後に、いつまでもはっきりしない彼に対して、粧子が今まで我慢していたことをすべて吐き出すセリフがあるのですが、それがすごく読んでいて清々しく、気持ち良かったです。
なかなか不倫相手に対して、こんなに論理的に相手を言い負かすことはできないと思うので・・。
唯川さんの初期の小説全般に言えることですが、色々あったわりに結末はすべてうまく収まる・・・ってパターンが多く、こちらも例にもれずその一つで、読者側としては少し物足りない感はありました。
でも、最後に唯川さん自身の「あとがき」があり、ご本人の思う「不倫」についてご自分の言葉で話をされているのが好感持てました。
テティスの逆鱗
一気読みできるというのは、物語にひきこまれたということ。
ちょっと有名なマンガに似てますね。
美人で容姿が売りの売れっ子芸能人が、美容整形依存症になっていくところ。やり手の女社長も出てきたり、売れるための接待も描いてる描写が、マンガと小説の違いはあれど、似てる。まあ、この設定は、この描き方しかないのかもしれないけれど。
売れっ子芸能人だけじゃなく、様々な女性が整形に依存していく話です。
「依存」は心が満たされないからおこるもので、その先には、さらなる空虚が待ってるわけです。
唯川さんの本は、読んでいると女性として心がえぐられるような作品が多いです。それでも、読みたいと思うのは、やはり、女性なら誰しも目を背けてはいけないと深層心理では思ってる部分をリアルに描いているからじゃないかなあと思います。
何かに依存してしまうのなんて、誰にも起こることであり、それが「美」というのは、それこそ、誰にでも起こりうることです。
今までは、「恋愛」(しかもドロッドロ)がテーマのことが多かった唯川さんですが、なんだか、もっともっとさらにドロドロとした世界へ進んだような気がしました。
ただ、小説の章立ての手法も、また、今回のテーマも、そんなに目新しいものではないので、その点で、☆4つです。作品は、楽しめる作品でした。文体も、相変わらず読みやすいです。