虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)
この著者のことも、もちろんこの作品のことも一切知らなかった。朝日新聞の書評欄で目に留めるまで。
日本SF史に残る大傑作らしい、著者は既に30代の若さで世を去っておられるとのことだった。
近未来の戦争を描く。軽快なハードボイルド文体で、アイデアも冴え、ウイットもよく効いているが
どうしよもない息苦しさが読書空間を支配する。これは、やはり作者が捕らえられ幽閉されている
不治の病の空間の残照なのか。
そして、最終的にはこれ以上はもう求めようもない、笑うしかないような圧倒的なペシミスム。
20代前半で発病し、悪性腫瘍の親玉にロックオンされながら生き抜いた10年間。私には
想像もつかないが、常に遊び心を忘れない、ギャグ精神を維持し続けるという、心の持ちようが
この人にあった。そう思いたい。
モンティ・パイソンネタがけっこう出てくる。一番笑ったのは、SWD という小道具。
Silly Walk Device だそうだ。
小説のストラテジー
ナボコフの文学観に近い。芸術至上主義。作品から読むことの快楽以外の教訓を引き出すことは小説の読み方を知らない音痴のやることと切り捨てる。無論その考えが正しいと言うわけでも間違っていると言うわけでもあるまい。
作家は誰でも自分が唯一の教祖であり唯一の信徒である。
佐藤亜紀のファンは必携だが、そうでない方には一教祖の御託宣である。
天使 (文春文庫)
端正で熱のない文体は、最初に読むのをためらってしまうくらい。
「え?俺読んでもいいの?」と実際に思った。
けれど、この突き放されてる感覚は、物語を読み進めてく内に大きな錯覚であったと気付く。
一つ一つは目を留めて見るほどのものではないんだけれど、
それを丁寧につなぎ合わせていったら、いつの間にか凄く綺麗なオブジェが出来上がってた。
そんな感じがした。
僕は頭も悪く、趣味もヲタク丸出しな文学とは程遠い所にいるダメ人間ですが、
そんな自分でも最後まで読むことが出来ました。
分からない単語や読めない漢字、第1次世界大戦時の欧州の様子など、気になったところは調べてでも読みました。(プロイセンなどという国は聞いたことがなかった
物語が硬派なファンタジーであること、何より著者から語られる登場人物達の描写が
とてもとても美しかったことが、最後まで読ませる力を与えてくれたのだと思います。
とてもよい作品だと思います。大好きな小説です。
青春H 再会 [DVD]
あなたは、やればできるって
思うことはなくはないよね?
じつは、
夢に出た思い出が
現実に影響を及ぼしてるってことに
気づかせてくれる
この映画は、ファースト・クラスです♪
追伸
30歳の恋愛のお話
そして、
夢の中から
学生時代の女の子が
突然出てきて
夢と現実のなかを
あなたは体験できるかもしれません
バルタザールの遍歴 (文春文庫)
キャラクター造形、基本設定、筋の運び。すべてに渡って、正統的冒険小説作法に貫かれている。しかし、そこに加えられた筆者ならではの薫り高い文体と筋にあらわれない裏設定の緻密さ(それを「世界観」と呼んでもいい)によって、ハリウッドなんぞ太刀打ちできない「近代ヨーロッパ」が召還される。オーケー。完璧だ(「評論はいいから、小説書いてよ」という筆者への期待を込めて星4つ)。