弾痕 [DVD]
「監督:森谷司郎 脚本:永原秀一 音楽:武満徹」という布陣を見て、なんだか不思議な組み合わせだなぁ、と思い、名画座へ足を運んで観て、やっぱり不思議な映画だなぁと思い、それ以来、妙に好きになった。
社会背景には安保闘争があり、高石友也は『死んだ男の残したものは』を熱唱し、過激派は米軍基地襲撃を企てるが失敗して死んでいく。
そうした、社会情勢の混迷の中では、プロの殺し屋である主人公もまた、殺人機械には徹しきれず、組織を裏切ろうする。
結末に待っているのは、死。
加山雄三でも、こんな屈折した役をやるんだなぁという意外性に驚く反面、単なるアクションではないが社会派と言うほどでもないストーリー展開が微妙で、脚本と演出が噛み合っていないような気もする。
そこがクセになると言えばなる(岸田森の登場場面は本当にクセになる凄さ)作品である。
あの頃映画 松竹DVDコレクション 「狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒涛篇」
豪華な出演陣による大作。
高橋英樹、緒形拳、近藤正臣、西郷輝彦、田村高廣らが
夫々見せ場を演じて見応え充分。
剣の流派が違うから殺陣も工夫されていて面白い。
ただ、映画の中の時間が長い。
幕末から明治の西南戦争まで。
どのエピソードをとっても一本の映画を作れる。
せめて風雲篇・激情篇・怒濤篇を3本のシリーズとして観たかった。
と、1974年の製作なのに無茶を言っていることは十分承知していますが・・・・。
獄門島 [DVD]
石坂&市川コンビの作品の中では一番映像美を感じます。何度見てもあきません。市川監督が犯人は一番犯人らしくない美しい女性で、ということで原作とは犯人が違いますが、これがまた素晴らしい作品になっています。大原麗子さんのコケティッシュな美しさ、亡くなった太地喜和子さんの艶っぽさは、この作品ならではでしょう。
太地喜和子伝説
太地喜和子の恋人、太地喜和子と親交が深かった芸術家、俳優、監督etcが、いかに彼女の魅力に惹かれ、また彼女を愛していたかがわかるエピソードや証言が続く。
第三者形式で綴られた本書は、小説風でもある。
まず、太地喜和子の華麗な男性遍歴に圧倒された。
舞台、映画での脱ぎっぷりの良さと大胆さ、豪快な度胸に天性の女優魂を見た。
また酒豪であり、素顔はあっけらかんとして、性にあけっぴろげ、可愛くて魅力的な女性だったようだ。
巻末に参考文献が多く載っているが、そこから引用された、妻帯者だった三国連太郎との愛欲の日々が壮絶。
一人の女として女優として、エロスの源が育まれたようなエピソードが物凄い。
その他のエピソードも、太地喜和子と関わった人物が、一女優として惚れて、一人の女としても愛おしくなってしまうほどの、いい女っぷりが、読み手のこちら側にも充分伝わってきた。
共演男優との下ネタ連発の会話やエピソードには、読んでいてタジタジになってしまったほど。
亡きがらの顔が非常に美しかったそうだが、「いい時に亡くなった」「太地喜和子の齢を重ねた顔を見たくない」と関係者が口をそろえて言ったという。
一番美しくて仕事に脂がのっていた時に潔く、桜の花が散るがごとくこの世を去った、不世出の女優・太地喜和子。
艶やかな一人の女が燃え尽きるまでの数々の伝説に魅了されてしまった。
本書には出演した作品の写真が掲載されていない点が惜しい。
また、太地喜和子の人物像を語る上でどうしても欠かせなかったのだと思うのだが、下世話な色話と下ネタ話が多すぎて気になった。
その話の出どころが参考文献のどこからなのか、誰の証言によるものかがわからない等の理由で★3
欲望という名の女優 太地喜和子 (角川文庫)
ノンフィクションというもののすごみを感じさせる1冊です。
人間は多面的で矛盾していて見る人によってまったく違った姿を見せる。にもかかわらずなお、その人ならではの色というものがあることを、演じる(別の人間になる)ことを生業とした女性を通して、その意味を肌に食い込むように伝えてきます。