人のセックスを笑うな (河出文庫)
立ち読みで全部読めるくらいすらすら読めます。
印象としては、主人公の日記をのぞき見た感じ。
こういう日常もあるんだな、と思わせる若干のリアリティと
弱すぎず、強すぎもしない主人公の感情表現が
読後のすっきりとした印象を持たせているのではないでしょうか。
嫌いではありませんが、私はもっと胸をゆさぶられる
感情の強い作品が好きなので、立ち読みで十分でした。
カフェで流れるような、淡々とした音楽が好きな人には良いのでは?
いきる
今までの由紀さおり像では考えられない多方面から詩と曲を集め、11の曲に表現された人間像は、全て”私、由紀さおり”と宣言し、11の切り口から”由紀さおり”を表現している。過去の集成に目を向けるのではなく、これからの10年をターゲットにしたと告白する。その宣言のとおり、大人の女性の心の隅にうごめく恋心から、《真綿のように》にでは”歌手 由紀さおり”を語り、多面的な人間像を表現し、アルバムを開くたびに、違った”由紀さおり”を聞かせてくれるほど奥が深い。11曲それぞれの完成度が高く、”これだ!”と単独の曲が目立つのではなく、”いきる 由紀さおり”というアルバム全体が、強く11の人間模様をアピールしている。アルバムを開くたびに、由紀さおりと我が心とのコラボレーションができて楽しい。近年の日本の音楽界にはなかった、完成度の高い秀逸なアルバムである。ご一聴下さい。
人のセックスを笑うな
『セカチュー』が『ソクラテスの恋』(最初はそういう題だったらしい)だったら今ほど売れることはなかったかもしれない。
でも、内容は同じでしょ? と思うかもしれない。
それほど題名が作品に及ぼす影響は大きいのだろう。作中の数々の名言や名文句と同じくらいの力があるのだろう。
作者は山崎ナオコーラ。前は山崎ロックというペンネームだったらしい。でも、作品は本当に正統派だと思う。
透明感のある風景、共感の湧く心理描写、魅力的で知り合いに欲しいとつい思ってしまう登場人物たち。100%の恋愛小説です。
ラストには、今どこにいるかもわからない昔の恋人のことを思い浮かべてしまうでしょう。
題名、ペンネーム、少しでも気になったら読むべきだと思います。損はしないはずです。
それはすでに作品に引き込まれているわけですから。
この世は二人組ではできあがらない
ワタシにとって初めてのナオコーラ体験の一冊です。
肌にまとわりつく空気とか、日差しとか、皮膚の感覚を精緻に表現するうまさは独特で、終始淡々とページをめくるうちにナオコーラ的世界にやみつきになります。
しかも、数ページごとにはっとするような(それでいてとても温度の低い)箴言がでてくるので気が抜けません。
あまたあるユニークな箴言のなかでひときわ印象が強かったのは
『まだ誰も見つけていない、新しい性別になりたい』
ということばでした。
子を孕むことのできる主人公の女性のなかの、硬質の感覚はまさに男性そのもので、「文学」という男性は彼女の子宮の中ではぐくまれているのでしょう。
たいへんな産みの苦しみを味わった(そしてこれからも味わう)であろう著者に敬意を表して☆いつつです。