花芯 (講談社文庫)
昭和30年代初めに書かれた、瀬戸内寂聴氏の
初期短編及び中編集。
川上弘美の解説に釣られて買ったわけですが、帯に
あるように「繊細で、清らかな、言葉」なのです。
発表当時は、毀誉褒貶の激しかった作品ですが、時間という
フィルターに濾過されてみると、何とも美しく、繊細な表現に
ただただ舌を巻くばかりです。
これを下品というならば、今や、上品な小説がどこに存在する
のでしょうか。
今風に言うならば、だめんずウォーカーな女の男遍歴が、
その心理描写を中心に書かれている小説と言えるでしょう。
いくつかそのその見事な描写を抜き出してみます。
「孤独は、そのころから、すでに私の皮膚であった。
思いようによっては、雪のように光る真綿の谷あいで、
ひとり、くったくもなく坐っているのは、私にはそれほど
いやなことでもなかった。」(『花芯』134ページ)
「噂というのは、いつも事実よりは、いくらかロマネスク
に飾りつけられている。」(『花芯』190ページ)
「人間って、人間の容(すがた)でいきていくには、
のぞいちゃいけない深淵ってものがあるんじゃないかしら。
難しい言葉で云えないけど、人間って生まれる前に、ちゃんと、
それを云い渡されてきているような気がするの。だれでも、
それを無意識に心得ているのよ。」(『花芯』221ページ)
もちろん、小説の主人公=寂聴さんではありませんが、
それでも寂聴さんと重ね合わせて読んでしまいます。
その後出家したことを知っている私としては、煩悩の
深い人ほど、悟りを求める心が芽生えるという
「煩悩即菩提」という仏教用語が浮かんだのでした。
終わりなき夏 永遠なる音律 初回版
舞台設定がオルタと同じ世界観らしい。
プレイ済みの人は理解できるが、未プレイの人は、いつの時代の話?大戦中の話か?でもアメリカ人の留学生とかいるし?と理解できないだろう。
私も雑誌でオルタと同じ世界観と知るまで、舞台設定どうなっている?と理解できなかった。
作中で、そのことについて語られていないのに、同じ世界観にしたら、訳が分からなくなる。
現代の平和な日本が舞台の話にすればよかった。
同じ世界観でやるなら、φアージュでなくアージュから発売するべきだと思う。
話の内容は、長め(これだけで一作品分くらいのボリュームがある)で1本道の共通ルートの後に、個別入って、エンディング。
1人クリアすると、次からスキップの連続になる。個別ルートも、共通ルートの最後がエンディングでもおかしくない内容だから、蛇足みたいな感じもする。
シナリオ自体は、先が気になる伏線や、登場人物が前向きに成長していく様が描かれていて読み心地はいい。
登場人物もヒロインはもちろん、サブキャラも好感がもてる。
全体的には高いクオリティに仕上がっている。
オルタをやった人は、あの世界はこんな感じなのかと、やってない人は理解し難い設定を黙殺すれば、楽しめる。
同級生 D-1 夏の終わりに [DVD]
人気恋愛ゲーム「同級生」のアニメ版。
1話ごとに各ヒロインと主人公の恋物語が語られる。
第1話は「田中 美沙」。
第2話は「黒川 さとみ」。
第3話は「仁科 くるみ」。
第4話は「桜木 舞」がヒロインになる。
この第1話ではやはりゲームで人気ナンバー1になった田中美沙との物語が魅せ場だろう。
主人公と喧嘩友達のような関係でありながら、主人公を好きな気持ちを秘め続ける。
それが怪我で陸上という大きな目標を失ってしまった際に、隠しきれなくなり、
保健室で主人公に処女を捧げ結ばれる。
破瓜の痛みに健気に耐える姿と、挿入の直前に
「自分の身体が女らしくないのではないかと心配する姿」が印象的。
ラストは主人公の膣内射精を胎内に受けて、四肢を痙攣させる。
熱い迸りも彼女には主人公に包まれているかのように心地よかったことだろう。
作画・演出共に「一流作品」である。
夏の終り (新潮文庫)
妻のいる家と、愛人の家を規則正しく行き来する男。もう一人の女の影を知りながらも8年間、お互いに無視しあう二人の女。
愛情が平等に注がれていれば、「妻」とか「愛人」とか、形って、どうでもよくなるのかなあ?
大人の女の強さ、意地、そして、幼さ、脆さが確かな力で残酷なまでに描き切られています。
不倫している人、略奪したい人にはリアルすぎてちょっと痛いかも。