第三の道―効率と公正の新たな同盟
市場に政府が介入をせずに小さな政府を目指す第一の道でもなく、政府が経済を完全に統制下に置く第二の道でもない第三の道としての社会民主主義の実践的理論仮説とは?…ブレア首相の知的ブレーンとしてのギデンスの著書なので期待して目を通したが、具体的な政策や仮説が多くのが本書の特徴のような気がした。そうはいっても本書がブレア首相の政策の理論的根拠となっているのでイギリス労働党の主張する社会民主主義を研究するにあたっては必読の書だろう。
ヒーリング・ボサノバ3
特に音楽のジャンルにうるさい方でもないのに 聞こえてくると耳につくと言うか 邪魔になってくる音楽だとダメです。アルバムの中に一曲でもそんな曲があると かけなくなるのですが これはそれがありません。
ここちよく通り過ぎていってくれる曲ばかり。「いい空間に住む時間」を作ってくれる そんな感じです。仕事や作業の妨げになりません。
日本の新たな「第三の道」
本書の述べる第三の道とは平等と国家の介入を重視する「社会民主主義」と
市場の自由と効率を重視する「自由市場主義」、
この二つの良い部分を高い次元で統合した路線である。
欧米では、2つの思想は政権交代によりいったりきたりしているが、
日本では徹底した市場主義、社会民主主義は行われたことがないという。
実際に、市場主義=小泉路線も途中でストップしたし、
社会民主主義も国家ではなく企業の福利厚生によって担われていた部分が多い。
本書では、効率的な福祉国家、社会統合を犠牲にしない自由主義国家を同時に推進することこそ
日本の取るべき道であるといい、そのための具体的な施策を述べる。
所感としては、第三の道とは結局のところ、市場主義と福祉主義の中庸であって、新しい価値観ではない。
言い換えると、どこまでを市場に任せて、どこからが任せないかを
効率性のみならぬ社会的共同体の維持という観点でみながら線引きを行うこと、
これが第三の道ということになろう。
本書で述べていることは至極まっとうだが、いささか常識的すぎる内容なので、
あまり面白みはない。
NINE QUEENS 華麗なる詐欺師たち [DVD]
どうしても見たくて、以前、英語字幕DVDで鑑賞した。
日本語字幕版発売とは夢にも思わなかったが、これは嬉しい限りだ。
脚本・初監督のファビアン ビーリンスキーが冴えている。
アルゼンチンで大ヒットを飛ばしたコンゲームもので、ブエノスアイレスならではの物語と言える。
どいつもこいつも胡散臭くて怪しすぎて、しっかり用心して見ていたにも関わらず騙されちゃうんだが、
これが爽快なんである。
副題?としてついている「ガストン・ポールス」ももちろん主演と言っていいが、
これはなんといっても「リカルド・ダリン」だろう。
この胡散臭いおっさんは、作品が異なれば知的で物静かな男も演じるから驚きである。
フェビアン&リカルド・ダリンで作った2作目。「El Aura」も高い評価を受けている作品で、
これも日本語版で出してくれたらと願うばかりだ。
荒廃する世界のなかで――これからの「社会民主主義」を語ろう
サッチャーやレーガン以来の価値観であった新自由主義が何を齎してきたのかということはだんだん僕らにも見えるようになってきている。
一億総中流社会という言葉はある時期の日本を言い表していた。僕の記憶している限り、いささかの皮肉が込められた言葉だったと思う。中流という言葉の中途半端さが皮肉を呼んだのかもしれない。しかし、今となってみると、「中流」はともかくとして「一億総」という部分に実は安定した社会を維持出来てきた鍵があったということなのだろう。一億総中流社会とは実は良い時代だったのではないか。
本書の基本線は「社会の中で不平等、格差が広がった場合には、結果としてその社会を壊してしまう」という点だ。新自由主義が「自己責任と自助努力」という呪いと共に、徹底的に個人のメリットを追求した点に対する著者の最も強い反論がそこにある。
「自己責任と自助努力」という言葉を謳歌した連中はリーマンショックの際に、皮肉にも国に救済された。too big to failという仕掛けまで用意していた連中の賢さには感心するしかない。
Winner takes allという言葉がある。敗者には何も残らないわけだ。敗者は退場せよと言われる。しかし、どこに退場させるのかということだ、社会から退場させようということなのだろうか?その延長上が本書にも出てくるゲートコミュニティーでしかない。勝者が住める場所はゲートで閉じられた狭い場所になってしまうのだろう。なぜなら勝者の数は少なく、圧倒的多数が敗者であるのだから。
本書を読んで勉強になったことは世界は「大きな政府」と「小さな政府」の間を振り子のように動いてきているという歴史を持つということだ。新自由主義が横行したリーマンショックまでの流行は「小さな政府」である。震災後の日本はとりあえず「大きな政府」を志向せざるを得ないだろう。それほどまでの、この振り子の振幅は大きく、かつ揺れも早い。
その「早い揺れ」の中で、そもそもの人間の社会というものはどうあるべきなのかを語るのが本書である。本書が説く社会民主主義は格差を減らし、平等を志向する哲学だ。それが本当に動物としての人間のあるべき姿なのかどうかはまだ結論は出ていないとは思う。但し、震災と原発問題を抱えた日本という特異な地点から見て、現段階では非常に魅力的な言説であることは確かだ。少なくとも最近の日本で「勝ち組、負け組」という言葉は聞かなくなったと思う。
但し、繰り返すが、それが本当に人間の本性なのかどうかは分からない。