コンプリート・ベスト「神の祭、風の歌」
シンセサイザー奏者の喜多郎さんは、過疎の村の農家を借りて、夜に即興演奏をしています。その時に、悪い音楽は地に沈むけれども、良い音楽は天に昇ると実感したそうです。姫神の音楽も、星空に昇る音楽です。都会のネオンに焼けて、排気ガスに濁った、疲れた空ではありません。宮沢賢治の、平泉の、十三湊の、縄文時代の、黒潮に洗われる島々の上に広がるものです。太古の清澄な天が、頭上に広がります。都会でひとり住まいをしている方に薦めます。心の傷を癒してくれるでしょう。
剣嵐の大地〈2〉 (氷と炎の歌 3)
この作品に付き合って長くなります。お話は少しずつしか進んでないように思えるのに
当初から登場人物たちが持っている魅力の深さと話の運びには最後まで付き合わされてしまいます。
普通のファンタジーならとっくに終焉を迎えるはずなのに
第3巻でなお深まる謎。 登場人物たちを襲う過酷な運命。
読み終わった後しばし脱力感を味わい
「この後どうなるんですか!」と思い、「作者はスターク家に何か恨みが‥」と
はやくも次巻を期待して待つのです。サージェイムは少し見直しました。
剣嵐の大地 3 (氷と炎の歌 3)
今、第三部、「剣嵐の大地」を読み終えた。最高だ。しかし、これはあくまで前半の終わり。
後半四部から七部までどんな物語がつむがれるのか?アメリカでテレビドラマ化すると知ったが、
どんな映像になるのか見てみたいような見たくないような複雑な気分だ。この小説の分類をファンタジーとするのはもはや間違いだと思う。
最大の人間小説ではないだろうか? 未読な方は、ぜひ一読を、この本から離れられなくなること請け合いますよ。
第四部を首を長くして待ち続けます。
大地のうた [DVD]
ビットリオ・デ・シーカの『自転車泥棒』に
触発されて作られたという本作は、
20世紀の初め頃、
インドの西ベンガルにある寒村に住む
赤貧にあえぐ一家族の日常を、
ドキュメンタリータッチで淡々と描いていく。
『せめて1日2回の食事と、年に2着の服が買えたら』と
嘆く母親のささやかな希望には、
嘗て『清貧の思想』という本に群がった、
何不自由ない飽食の時代に生きる日本人に、
清貧が美徳だなんて戯言を言わせない重みがある。
本作の中核をなすのは、
主人公オプー少年の姉と伯母の死だ。
老いた伯母は、林の中で落ち葉のように枯死していき、
肺炎を患った姉は、風雨吹き荒れる嵐の夜に、
天の怒りを鎮めるための生贄の如く静かに息絶えた後、
姉は蜘蛛に、おばは蛇に生まれ変わって、
愛着の地で新たな命を得る。
サタジット・レイ監督は、輪廻転生と言う死生観を下地に、
生きとし生けるものの命の連なりを、
西ベンガルの自然を通して描くことで、
人を本来あるべき自然の中に回帰させる。
命が軽んじられ、形の見えなくなった死が蔓延する
現代社会の中で、生きる事の意味を見失った人に、
57年前に作られた本作をお薦めしたい。