早春スケッチブック DVD-BOX
リアルタイムで観ていた当時は、視聴率もあまり良くなく、周りの友人でも観ていたのは数人だった。しかし内容は素晴らしく、山崎努扮する沢田竜彦のせりふのひとつひとつが非常に印象に残った。有名な「ありきたりなことを言うな!」というセリフだけではなく、「人間はその気になれば、いくらでも深く、激しく、ひろく、やさしく、世界をゆり動かす力だって持てるんだ」「人のために生きたいが、どうしても自分本位になってしまう、そう思っている奴の方が、目がさめている」などのセリフを今でも事あるごとに思いだすことが多い。
これらの名セリフを生んだ山田太一の脚本の素晴らしさは言うまでもないが、山崎努の演技(電話のコードを頭に巻きつけ頭痛発作の苦しみに耐える姿、死の恐怖に打ちひしがれて小便を漏らした時に息子が訪ねて来た時の狼狽ぶり、洟をたらしたまま静かに泣いている姿、寒い日に良子と歩くセリフのない場面)にも圧倒され、当時は沢田の言葉に感化され、自分も「ありきたり」ではない人生を送りたいなどと考えていた。しかし、すっかり「ありきたり」な日常を送るようになった現在、観てみると、当時はほとんど魅力を感じなかった河原崎長一郎扮する平凡な父親が、仕事や家庭を守るために孤立気味になっていく中盤や、一大決心をして自分を変えて沢田の家に押しかけて行く場面が印象に残り、山田太一が本当に描きたかったのはこちらではないか?とも思う。
視聴率優先の今のテレビ業界では決して製作されないであろう。たとえ製作されても、山崎努のような存在感や、河原崎長一郎のようにリアルに平凡な小市民を演じきれる役者がいるだろうか?
ふぞろいの林檎たち 3 [DVD]
いつも一緒にいた仲間に、恋人ができると、自分が取り残されているような気分になったりします。同じ大学に通っていた友人が、就職を決めてゆくと別々の人格であったことを自覚させられてゆきます。就職する会社が一流の企業であれば、自分も一流になって、別の自分に生まれ変われるような気もしてきます。そういった、人生の節目で、後から気がつくのにその時には単にイラついたりするしかないような、感情が描かれているように思いました。また、中井貴一さん演じる仲手川良雄のキャラが結構好きです。男前でありながら勉強はできず、家の手伝いを良く行い、軽トラで遊びに行く。真面目で人の世話を焼き、好きな女性に尽くしながら、据え膳を食えない。先が見えないというか、ぶきっちょというのでしょうか。このドラマをご覧になる方は、登場人物のどこかに自分を投影してご覧になるのではないでしょうか。
ふぞろいの林檎たち〈4〉
『ふぞろいの林檎たち』最終シリーズである。今後〈5〉が作られることはもうあるまい。いよいよ終わりかあ、と、そんな感慨をもって本書を読んだ。ドラマの方は見ていない。
〈4〉の特色は大きく2つあるように思う。1つは、新しく2人の若者(克彦と美保)が出てくること。良雄、健一、陽子、実らおなじみの面々をつなぐ存在として、彼らは大事な役割を果たす。ビルドゥングスロマン的な視点を取り入れることで、物語に新しい風が吹いている。何より作者の山田太一自身が少しマンネリを感じていて、その弊を回避したかったのではないか。
もう1つは、良雄の母・愛子が隠れた主役になっていること。さらに実の母・知子も、決して出番が多いわけではないけれど、重要なポジションを担わされているように感じた。後半、2人のやりとりでグッとくるシーンがいくつもあるし、もしかしたらこれが最も肝ではないかとさえ読めた。もちろん大きなハイライトは別に用意されていて、それはそれで読み応えがあるのだが、僕は静かな老女たちの会話にこそ心を動かされた。
ドラマを見ていないくせに、「活字で」本シリーズを制覇した僕は、珍しいファンかもしれない。ドラマを見てみたい気もあるが、是が非でも見たいというような情熱はない。僕にとって『ふぞろいの林檎たち』は、すでに「活字で」完結しているからだ。
中小企業診断士2次試験 ふぞろいな答案分析
昨年度、合格者した者です。
これらの本の3年分は、オリジナルで読んでいました。
中小企業診断士2次試験対策本のデファクトスタンダード・定番です。
中小企業診断士の2次試験は正解や配点が公表されません。
そのため、どのように勉強すればよいか難しいです。
この本には合格者と不合格者がどのような内容を書いたか詳細なデータが3年分掲載されています。
他の診断士の2次試験対策本は、執筆者の考える答案の妥当性の説明はあります。しかし、例えば実際にどれくらいの受験生がどんな解答したかといったデータは書いていません。
今までは3年分揃えるには3冊買わなければいけませんでしたが、この本には3年分載っているので、お買い得だと思います。
ふぞろいの林檎たちII 5 [DVD]
名作シリーズの最終巻です。今度は、仲手川良雄を巡って二人の女性、陽子と晴枝が争うかに見えたのですが・・・。看護婦をやめ、水商売に入って多くの男たちと接触した晴枝。恋人と煮え切れない関係を続ける陽子。ふと傍に、いつも優しくて思いやりのある良雄がいた。恋の糸は絡んでゆくかと思わせたのですが、時間がなかったのでしょうか。最後は端折ったように印象も受けました。最後の山田太一さんのメッセージは熱い気持ちで人を愛せ、ということだったかと思います。このドラマを見て学生時代の仲間を懐かしく思い出しました。時々見返したい作品です。