本書には三つの話が収録されていて、いづれも小学生あるいは中学生の「少年」が経験するほろ苦い気持ちや、若さゆえに自分ではどうしていいのか分からず迷い悩む様子が描かれています。
三篇とも主人公の「少年」の名前は違いますが、正に北野氏本人であり、同じく登場する兄も北野氏の兄を想定しているのでしょう。
北野氏は芸能界でバラエティーや辛口批評番組に出演する一方、映画監督として優れた才能を発揮しています。
その原点は、世間一般の大人とは違い、いろいろな経験をした「少年」の心を持ち続けていることにあるように思え、その一端がこの小説に表現されているように思えます。
短編小説ではありますが、純粋で繊細な「少年」の心を美しく描きだしており、心が洗われた気持ちがしました。
「少年」の心を忘れた現代の大人達に読んでもらいたい小説です。