本作は、野村芳太郎が「砂の器」を撮り終えた後、新藤兼人の脚本を得て作られた作品と記憶する。本来、野村監督は推理ドラマを得意とするが、本作はその中でも出色の出来ではないか。キャスティングの妙(下条アトムのチンピラぶりを見よ)、骨のある脚本、名手川又昂の撮影、そしてテンポのある演出・・・。単なる推理エンターテイメントに終わらせるのではなく、そこから、映画を見る者をして、人生の来し方行く末や仕事、兄妹の情愛などを感じさせる力が本作にはある。映画を作るということは、ノルマをこなすのでもなく、作業を行うのでもない。作品をスタッフ全員で作り上げるということだろう。そうした熱気が本作にはごく当たり前に伝わってくる。当時の日本映画の水準をうかがう意味でも貴重な作品である。
昭和枯れすすきおすすめ度
★★★☆☆
1975年度、高橋英樹31歳のときの作品です。それまで日活で刺青を彫った任侠映画のイメージが定着していた彼にとって、久しぶりの現代もの、しかも新宿署の刑事という役柄です。
地方から上京して来た兄と妹、この兄が妹を思いやる気持ちの行き違いがドラマの大きなテーマです。いまどきは少し古風に感じられるストーリー展開ですが、でもこんな兄と妹がいたら、いいと思います。
妹を演じる秋吉久美子が初々しく、高橋英樹に代わって抱きしめてあげたい位でした。
古い映画にしては、デジタルリマスターされているので、画像もまずまずです。
良い出来でした
おすすめ度 ★★★★★
わたくしめもついに買いましたよ
。従来の伝統を引き継ぎつつ、バランスがうまくとれてます。
こつこつお金を貯めてでも買う価値のある一品だと思います!
概要
新宿署のヒラ刑事・原田(高橋英樹)は妹の典子(秋吉久美子)とふたり暮らし。しかし真面目な兄に対して妹はやさぐれていて、専門学校も勝手に辞めてしまった。そんなある日、典子とつきあっているチンピラの吉浦(下條アトム)が殺された。その現場には典子のネックレスが残されていた……。
結城昌治の『ヤクザな妹』を原作に、当時大ヒットしていた同題歌謡曲を要所に流しながら繰り広げられていく兄妹のやるせない愛憎劇。名匠・野村芳太郎監督は、殺人事件のミステリサスペンスとしての要素もさながら、繊細な市井のヒューマンドラマとして本作を見事に構築。新宿の繁華街をリアルに活写した川又昂のキャメラも素晴らしい効果を上げている。小品ながら見逃せない秀作。それにしても、秋吉久美子は本当に小悪魔的で可愛い。(的田也寸志)