スマイルBEST ブラックブック [DVD]
ポール・ヴァーホーヴェンが撮るユダヤものって? と興味津々で観ましたが、真摯な反戦映画として撮られていながら、ちゃんと彼らしい作品になっていました。
何よりも、これまでの作品にも存在した、人間の様々な欲望についてしっかりと描かれているあたりはさすがです。彼らしいと言えば、「氷の微笑」「ショーガール」などブロンド美女の存在が欠かせませんが、ブロンド・フェチなんですかね。アンダー・ヘアにもこだわる描写まであります。いいですけど。(笑)
主人公のラヘル=エリスを演じたカリス・ファン・ハウテンの体当たりの演技が、話題に上っていますが、セクシーさの中に上品さと強さがある彼女の存在感。ムンツェとの疑惑の駆け引きや家族を殺した男を見咎めた時の青ざめた表情、真相を突き止めようとする時の殺気を孕んだ表情出の演じ分けとかスゴイです。
反戦映画ではあるのですが、ラブロマンス的なスパイスを効かせつつ、物語の中心はヒッチコックばりのサスペンスフルなものになっています。レジスタンス活動の一連の動きが伏線となり、ラストまで収束していく疑惑の視点が非常に面白い。
運悪く捕まってしまうレジスタンスのメンバーと、それを助けようとする活動家の動き、エリスの家族が犠牲になった裏に隠された忌まわしい計画と金の匂い。そして、全てを裏付けるネズミが誰なのか? という謎ときの妙味。
初めの方に何気なく出てきたセリフが後で影響していたり、棺桶の中に入り死体を装って検問を突破、インスリンとチョコレート、パーティのマイクと盗聴マイク、等々の小ネタや小道具が上手に使われていたりと、1級のサスペンスに仕上げています。
ラストシーンは、監督なりの皮肉なのだろうなぁ。
宇宙の戦士 (ハヤカワ文庫 SF (230))
どうもこの作品は軍国主義的、スーパーライト(と書くと煙草みたいだな「極右」か)、ファシズムといった形容詞で語られるのですが、私には特に違和感はありませんでした。戦争は狂気であり、勝つための軍隊には単純で明確な信念がなければいけないのは古今東西古来からの常識であり、戦争道具の軍隊をどういう立場に立って描くのかが作家の視点。ハインラインが極右でないことはその後の作品を読めばわかることだし、この作品で戦争を肯定的に描いているのも、「必要悪」に対して考えるチャンスを作家という職人の立場から与えたものと考えれば良いと思う。
そんな言い訳っぽいことより、単純で幸せだった昔のエンターテイメントとして読んでも良しです。
スターシップ・トゥルーパーズ3 パワード・スーツBOX 7000セット限定生産 [DVD]
あまりに酷い評価に全く期待せず観ました。が私は容認派です こんなの評価する輩は、、などと思う方大半でしょう。万人受けしませんね。 しかし精神は1作目を踏襲してます。確かに1作目のバグ来襲の凄さからすると、もう下の下。VFXはC級。知る人ぞ知るCGアニメ版スターシップ〜並。しかし1、2の大ファンの私には満足でした。 奥底に伝わるポールヴァ-ホ-ベンの精神を感じました。 大作リメイクしてほしい!と思うのは私だけでしょうか?
スターシップ・トゥルーパーズ3 デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
戦争映画なのに、大規模な戦闘シーンが冒頭と最後にしかなく、そのどちらもCGや特撮のデキが悪くてつまらない。そして戦闘シーンがほとんどない中盤をつなぐハズの人間ドラマ、政治劇が始まるのだが、脚本も俳優の演技も今一歩の内容でとても満足できるものではない。
膨大な予算を費やして押し寄せるバグとの大戦争を歩兵視点で描くことに成功した1、低予算ながら(ありがちすぎるネタと展開であるものの)流れるような展開で視聴者を引っ張った2、そのどちらの長所も継承することができなかった模様。(まぁ2は黒歴史扱いだからしかたないけどw)
ただし、この映画はマトモな戦争映画としてみるモノではない。我らが地球連邦の総司令官がノリノリで歌い出す冒頭1分の時点でこの映画が、軍事独裁を嘲笑う為に作られていることは明らかである。
独裁政権下で、自分たちが抑圧されていることにさえ気がつかないIQ低めのバカ兵士が人類至上主義の名の下に宇宙規模で環境破壊する様を見て大笑いする。
1がこういう趣旨のもとに作られた映画だと感じられた人なら今作もそこそこ楽しめるはずだ。
制作者もこの辺をわきまえているらしく、劇中CM、ニュースのクオリティが1の水準を取り戻し、挿入される量も倍増している。このシーンだけで私は満足できた。
逆に、1を純粋な戦闘エンターテイメントとして楽しんだ人は見てはいけない。
今作はいろんな楽しみ方を提供できた初代よりも懐の狭い作品である。3から見るなんてもってのほかだ。
スターシップ・トゥルーパーズ [DVD]
一見、軍隊の中で激戦を通して成長していく若者の物語なのですが、
間に挟まれる「政府発表ニュース」がこの作品自体が壮大な皮肉であり、
ブラックユーモアであることを語っています。
これによって戦争や軍隊を徹底して茶化し、漫画化してしまいました。
そのバカバカしくも偉大な手法に感嘆します。