フー・ファイター―With heart of darkness (MGコミック)
表題は第二次大戦中に目撃された「謎の火の玉」ことフー・ファイターをテーマにしたマンガです。普通の軍記ものをイメージして読んだらちょっととまどうかもしれません(でもあとがきを読むとこの手の話が作者のお気に入りらしい。新連載も超常現象がテーマだし)
二本目は連載時のものを加筆訂正しているので「当時読んだからいいや」という人も必見です!
碧の孤狼―Japanese interceptors 1945 (MGコミック)
追い詰められた状況の人々の行動をレシプロ戦闘機を駆るパイロットや研究者の視点から描いています。
著者の作品には珍しく、ちょっと想像力豊かな作品ですが、その点を考慮して星3つかな。
神々の糧 (滝沢聖峰コミック)
表題作「神々の糧」は太平洋戦争中の日本軍を主役とした怪奇SF譚で、題名から有名古典小説を連想された方にはネタバレしているのですが、滝沢氏の既出作品集「フー・ファイター」を気に入った方や特撮映画がお好きな方には限りなくお薦めです。
作者の地味なキャラクターデザインの日本兵が南洋の孤島で遭遇する怪異は当初からクライマックスまでの等比級数的なエスカレート振りが凄まじく、思わず呆気に取られます。
その他では珍しい第二次大戦中のフィンランドとソ連空軍の戦いを描いた掌編や、F1物等異色の短編も含まれており、バラエティに富んでは居ますが、やや散漫で拾遺集的な印象です。
それでも一見地味ながら綿密な取材に誠実な絵に奇想を加えた滝沢氏ファンには堪らない作品集です。お薦めです。
Tale of Rose Knight―ばら物語〈Vol.1〉
「16世紀
中世とも近世ともつかないその時代
イタリア諸邦の都市国家軍は
近隣諸国間の脆弱な勢力均衡の上で
繁栄を誇っていた
しかしやがて
その肥沃な大地と文明は
領土拡張に動き出した諸大国の
脅威にさらされることになる
イタリアは
統一国家としての形を見出せないまま
何度となく他国軍の蹂躙を許していた」
北イタリア。ロンバルディア戦線。
フランス軍VS教皇軍(セッシア都市国家郡、ミラノ公国、他)の戦い。
方陣、長槍による歩兵、従兵、砲兵、騎兵が理によって整然と戦う。
また諸勢力内部のいさかい、傭兵を扱う難しさ、どこか牧歌的であるが
非常に生臭い駆け引き。16世紀のイタリアにおける戦争とはこのようなものだったのかと読者を瞠目させる。
主人公の女性騎士団長、女性の砲兵部隊長を軸に話は展開される。2巻が待ち遠しい。
歴史好き、または漫画「ベルセルク」のキャスカ、「風の谷のナウシカ」のクシャナ、「皇国の守護者」のユーリア。戦記好き以外でも、彼女たちが好きであれば一読の価値はある。
漫画として可視化された非常に緻密かつ大胆な戦争絵巻、得とご覧あれ。
傑作。
東京物語<上>: 滝沢聖峰コミック (MGコミックス)
緻密な作画の作品が多い氏としては少しラフな線さばきであったが読み
進むうちに物語の展開に合っているように感じられた。
ただ、主人公の妻の顔の作画はどうしても生粋の日本人の顔には見えない。
「ばら物語」下女ジェルソミーナ・「ガンズ&ブレイズ」トキの
顔をちらちら連想してしまう。大和撫子の凛とした強さではなく
西欧風の自立心の強い顔といった印象を受ける作画である。
まあなんだかんだ言っても下巻発刊の8月が楽しみ。
追記 「新太平洋戦記」の中の一作品、東京物語がここまで長い作品に
なると「帝都邀撃隊」の海野一義と渡辺美那子の『その後』ぜひ描いて
いただきたい。そのときは凛とした緻密な作画でお願いしたい。