珠玉のリスト名曲集
ショパンコンクールで話題となったゲキチのリストです。
全体的に音色は美しく、一音一音を完全に支配下におき、音の粒が浮き立つような演奏をしています。その点では若き日のポリーニに似ているのかもしれませんね。
柔らかく暖かいというより、硬く冷たい響きが特徴で、非常にシャープな印象を受けます。テンポも速めです。ラ・カンパネラなどはそういったゲキチの長所の相乗効果により、素晴らしい出来になっています。が、一方でちょっと弾き飛ばしすぎかな?と思える箇所・曲(個人的にはエステ荘の噴水あたりなど)が見受けられるのもまた事実。高い演奏技術を持っているのはわかるのですが、時折技巧的側面がむき出しになってしまっているところがあるような気がするのです。
叙情的な曲よりも、むしろ技巧的な練習曲のほうがゲキチの表現力・構成力が活きるのでは?と思います。
それらの事情を考慮して星4つです。
リスト:超絶技巧練習曲
リストの「超絶技巧練習曲」
あなたは、今お持ちのCDだけで、ご満足ですか。
技巧だけを追い求めたもの、技量不足を演奏者の都合の良い解釈で勝手な「感性」に置き換えているもの。
ゲキチの「超絶」は、そのようなCDではありません。
完璧な技巧、息を呑む跳躍、一分の隙も無いスケール--想像を超えるダイナミックレンジ、さらに豊かな色彩感。
特に一曲だけ紹介するならば、第8番―冒頭の3小節だけで、あなたは死霊に姿を変え、魔界へと旅立ち、『死者の狩り』にいざなわれます。
怪しげな音に翻弄され、我を忘れ、再び生きてこの世に戻れるのか--通常では考えられないほどの、不安、焦燥感に煽り立てられます。
しかし、ご安心。5分10秒後には、晴れて、現世に「突き落とされ」あなたの夢は、無事!覚めるでしょう。
ゲキチのリストを聴かずして、リストを語る無かれ。リストは十二分に文学者である。