最高齢プロフェッショナルの教え
どうやって仕事と出合い、その仕事をいかにして天職としたか……これをテーマに、さまざまな分野の現役最高齢プロフェッショナルにインタビューし、教訓をまとめた人生の指南書だ。一見、「何をしたいかわからない」とぼやくニートやフリーター相手の手引書のようだが、内容は極めて奥深い。「これからどう生きるか」を思案する、すべての世代にとって、先輩からのまたとない助言集である。
登場するのは、漫画家・やなせたかし(91歳)や落語家・桂米丸(85歳)をはじめ、パイロット、ギター職人、喫茶店店主、ライフセーバー、杜氏、洋樽職人、声楽家など仕事の達人15人。やはり驚くのは年齢で、80歳、90歳は当たり前。最高103歳の現役プロが、それぞれの半生と仕事への思いを語ってくれる。面白いのは、60代で人気漫画家になった、やなせたかしや、48歳でJRAの騎手免許試験に合格した安藤光彰(51歳)など、遅咲きが多いこと。これには勇気を得た。
また、札幌ススキノの名店「BARやまざき」のバーテンダー、山崎達郎(90歳)の「自分が辛い状況にあるのは、過去に自分がしてきたことの結果に過ぎない。だから『きっとよくなる』と考え、今できることを精一杯やることが大事」、そして、会社倒産後に47歳で日本初のDJとして再出発した安藤延夫の「好きな仕事がなかったら、自分で作ればいい」という言葉は、胸に響き、これも勇気が湧いた。
安藤光彰を除く全員が戦争をくぐり抜け、敗戦が何がしか人生の転機になっていることも興味深い。とにかく、思わずはっとするような金言や語り手が一生をかけて獲得した格言が頻出する、座右の銘の宝庫である。各人物の人柄・仕事柄が滲み出たポートレートも秀逸。年を重ねても輝き続け、生涯現役でいるためには必読。人間ドキュメントとして読んでも一級の一冊だ。