Sugarless
スガシカオなら音楽好きにとってはシングル曲よりもそのマニアックな世界の方を知りたい、と思わせるアーティストでしょう。今作のほぼB面曲集というのは当にそのツボを押えるようで、他で補えないビターな味を求める心の隙間をうめてくれます。
その姿勢はいきなり1「マーメイド」から。ずっと妖しく静かなサウンドデザインに包まれ、綴られる歌詞は…!冒頭なのに全くキャッチじゃないどころか、暴くような切り口で塗られる狂気さが凄くいいですね。7「バクダン・ジュース」もサイケデリックなリフに乗って観念的な世界が展開され、抽象画のように感覚的で奇抜な面白さをみせます。こういうミステリアスなタッチは知的でワクワクです。
一方短編小説の冒頭がそのまま8ミリ映像に変ったような2「ユビキリ」、3「夜空ノムコウ」、5「夏祭り」、13「坂の途中」等はスガ氏の、儚さの表現や、行間へのクローズアップが優れている側面を見せます。風景と共に匂いや空気が伝わり、更にはそれが心理と連動する描写力が非常に魅力的です。特に4「ぬれた靴」は7と正反対に写実的で、しかも一見他愛もない瞬間を切り取った歌詞ですが、妙にリアルで迫るものがあります。曲調はさりげない全くキャッチさのない歌なのですが。だからいいのかもしれません。
9「うきぶくろをもって」は渋谷系っぽいテイスト。10「これからむかえいにくよ」や11「8月のセレナーデ」の詞はひとつの真理を曝け出した後に積極的な心情が聴き所。12「Room201」は一人暮らしの憂鬱な夜の思い出がキラキラと甦りそうです。
スガ氏の声は、歌詞が興味深く展開する心理描写の妙を、さらっと奏でる清潔感があり、ある種の儚い余韻も残しつつ流れてゆくので、耳には優しく脳にはセクシーに響いてくる、と自分は感じています。氏の音楽のアーバンで沈静した視線の趣は、その声がそれを成立させうる大きな要素のように思えました。
世界に一つだけの花
この歌は少なくとも、「一番になってはいけない」などとは一言も謳っていないし、努力することを否定しているわけでもない。
(「自分の花を咲かせることだけに一生懸命になればいい」というフレーズがそれを証明しています)
外見や才能などは関係なく、あなた自身の存在自体が本当に大切で尊いということを歌っているのに、その一部のみを誇張・曲解して否定している人がいるのは、とても哀しいことだ。
外からの評価や、競争に勝って一番になることよりも、もっと大事なことがある。
少なくとも私は、そのことに気づかされた素晴らしい楽曲であると思うし、日本にこのような曲が存在することを大変誇りに思う。
ALL SINGLES BEST
飽きることなく、ずーっと聴いています。
シカオちゃんの曲を聴いていると、忘れていたものを不意に思い出したような、
なんともいえない気持ちになり、心がざわざわします。
声も好きです。
「あまい果実」は鳥肌が立ちました。
これからまたどんな曲を届けてくれるのか、楽しみでしょうがありません。