ルネサンス時空の旅人『聖なる都アッシジ物語』 [DVD]
「ルネサンス時空の旅人」シリーズの1巻である。
タイトルは「聖なる都アッシジ物語」となっており、アッシジの町と教会を存分に紹介してくれるものと期待したが内容は少し異なる。
実際は「アッシジが育てたイタリア中世の画家ジョットーの生涯と作品」というべきであろう。そう思って見ていただければ内容は質実ともに充実している。
ただし、お値段は随分高いですね。損保ジャパンがスポンサーとなって日本テレビが制作放映したものであることを考慮するともっと入手しやすい価格設定にすべきではなかろうか。
須賀敦子のアッシジと丘の町
著者の目を通して、かつて歩んだ須賀敦子にとってのアッシジが今もそこにひっそりと在ることをかんじさせてくれる。美しい写真の数々、静かに語りかけてくる文、アッシジという町をそっくりそのまま伝えてくれる本に出会えた。聖フランシスコの生きた風景、日本人が半日限りで通り過ぎてしまっては出会えない場所や人、私ももう一度アッシジへ行きたくなった。
イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ (とんぼの本)
中部イタリアのフィレンツェ・シエナが位置するトスカナ、中世地中海の多様性を内包したアンコーナがあるマルケ、アッシジを中心とするウンブリア地域などの聖堂を中心に歴史と美術について有識者が記述しています。時代的には、11世紀から13世紀の盛期中世と呼ばれている時代の伽藍建築や聖堂内部のステンドグラス、壁画が美しく紹介してありました。
観光のお供につきものの中部イタリアの料理の項目もあり、実際にこの地域を訪れる際のガイドブックの役割も果たせそうです。
参考になったのは、各聖堂のファサードだけでなく、平面図が掲載してあり、それぞれのページの写真を撮った位置と方向が明示してあるので内部空間のイメージが浮かびやすく理解しやすいところでしょう。
筆者の金沢百枝氏はロマネスク美術の研究者で、小澤実氏は西洋中世史の研究者ですから、各地域の美術と歴史の記述は分かりやすい言葉で書かれていますが、含蓄のある内容でした。
32ページには、ピサの斜塔で有名なサンタ・マリア・アッスンタ大聖堂の荘厳な全景が映し出されています。中庭を囲む回廊の差し込む光と影が風格と威厳を作りだしていました。
歴史文化の啓蒙書ですし、読み物としても優れていますが、オールカラーで写真も多く、壁画などの美しい発色を眺めているだけでこの地域を訪れているかのような疑似体験ができました。
本サイトの商品の説明に目次や内容が詳しく記載してありますので、その点は省略して読後感を記しました。
プレイズ・リスト
アルカディ・ヴォロドスのCDは今回が初めての購入でしたが、噂以上のピアニストです。このアルバムの選曲もタダモノではありませんが、演奏も圧倒的です。打鍵を含むコントロールの余裕が演奏技巧的に優れているだけではなく、曲の分析が大胆かつ超繊細。「葬送」が良い例で、技巧的に抑制のとれた表現が何とも知的です。『詩的で宗教的な調べ』の全10曲録音をしているアルドー・チッコリーニの録音もなかなかだと思っていましたが、ヴォロドスの演奏を聴いてしまうと、チッコリーニの「葬送」が単に一生懸命弾いているだけに聴こえてしまいます。憤激と激しさで確かに男くさい「葬送」ですが、ヴォロドスのこの録音を効いて、極めてロマンチックでありながら、ある意味ゆがんだ愛情表現が込められた作品であることを初めて認識しました。(<初版副題>疑惑の正当性が音楽的に証明されているではないか!)ソコロフとは違ってヴォロドスは日本盤が発売されているからいいですね。
アッシジの聖フランチェスコ
訳がいまいちで文意が不明のことが多々あった。論文の訳ということで、普通に読む本とはちょっと違う感じ。
フランチェスコが、修道会の修業僧ではなく、庶民が、宗教的な仲間としてキリストのような生活をする理想を抱いていたものの、異端にならないためには法王庁と妥協していったことがわかる。