ソドム百二十日 (河出文庫)
『ソドム120日』で語られる放蕩の120日が始まる前の、いわば序章部分の翻訳。4人の非道哲学者は、語り部にさまざまな放蕩を語らせることによって、人間のあらゆる情欲を分析しようと試みる。その方法はもちろん、経験論に基づく実践、つまりサディスティックな饗宴ということになる。原稿を紛失した際、サドが「血の涙を流した」ことからも分かるように、この作品には彼のすべてがあるといっても過言ではない。「すべてを言」おうとする百科全書的精神、ひとを寄せつけない舞台装置としての城、延々と反復される哲学論議と饗宴の描写、語られる美と描かれる醜、数字への偏執的なこだわり、などなど。本書は抄訳だが、こういったサド的世界の雛型として十分に通用する部分が訳されているので、サド入門として恰好の一冊と言えるだろう。
澁澤節がよほど嫌いでない限りおすすめです。
野ゆき山ゆき海辺ゆき DVD SPECIAL EDITION
最初テレビで見たとき、途中で涙がぼろぼろ出て止まらず、声も出てしまいました。
こりゃたまらんと思いましたわ。
だいぶしてから再放送を見たんですが、もう泣かないと心したのにまた声を出して泣いてしまいました。
まさに慟哭というやつです。
こんな映画、後にも先にもありません。
お勧めです。
現代語訳・徒然草 (河出文庫)
春夫は日本の古典文学にたいする造詣が深くて、様々な作品を現代語に訳している。中でも徒然草は愛読書であったらしく、よくこなれた訳として完成度が高い。古典文学大系関連の注釈たっぷりな直訳よりずっと楽しめる。そしてほんらい古典とは気楽に楽しめれば一番よろしいのです。この一冊はおすすめ。
田園の憂鬱 (新潮文庫)
独特な自然描写はすばらしいできばえですが、外界を写しているというよりは主人公の内面風景、心象描写というほうが良いでしょう。幻想描写もじつに濃密で、別世界に引き込まれます。憂鬱や退屈を描きつくしてはいるのだけれど、不思議なくらいに美しく、楽しめます。だからこの作品に出会って救われたような感じがする。