映画史上最も美しいニコールに会える。 おすすめ度
★★★★☆
映画はアフリカ・マトボ共和国(架空)から始まります。『ブラッド・ダイヤモンド』で見た少年兵がここでも登場し、
サッカー場の廃墟で手作りのボールで遊んでいる少年達が、シルビア(ニコール・キッドマン)の兄サイモンと
恋人を射殺するシーンなのですが、流石にショッキング。
そして一方、N.Y国連本部で同時通訳を務めるシルビア(ニコール・キッドマン)は、ある日偶然
マトボ大統領のズワー二暗殺を知ってしまう。知らせを受けた当局は、シークレット・サービスのトビン・ケラー(ショーン・ペン)を
担当に差し向ける。しかし、トビンは彼女の言葉に疑問を感じ、彼女の怪しげな行動を探るのだった・・・。
妻を交通事故で失ったばかりのシークレット・サービスを、ショーン・ペンが熱演している。
酔った勢いでバーから自宅に電話するケビン。誰も居ないはずの自宅。受話器から聞こえてくるのは、生前の妻の留守を告げる声。
そのダイヤルに2度もコールするケビンの悲痛な表情が胸に迫る。ミスティック・リバーを彷彿とさせる渋い演技。
あのハスキーな声と相まって、アルパチーノ2世と言った感もある。
あくまでサスペンスなので、ストーリーのネタバレを避けたいが、ラストのセントラルパークのシークエンスで、
トビンとシルビアの別れのシーンが良い。僅かな希望を残しつつアメリカを去るニコールの後姿に、
静かにアフリカン・ミュージックがフェイド・インすると、カメラはユックリとパーンして、N.Yの摩天楼郡をなめて行く。
ワイド画面に白く輝く国連本部ビルが映し出される。しかし、その先には、過ってそこにあった二棟の巨大なビルは無い・・・。
銃声が響き、何も聞こえなかった。
だが、人間の言葉は他の物音とは違っていた。
それは、他の物音に勝る力を持っていた。
叫び声ではなく、小さな声だとしても。
かすかな声でも、銃声に勝るのだ。
それが、真実を語る時は・・・。
この言葉は、映画のラスト近くに出てくるある書物の一節なのだが、この数行に、『シドニー・ポラック』監督の伝えたかった
メッセージと、ここ数年制作された幾つもの映画のテーマがクロスしている。主人公のニコール演じるシルビアの職業は
タイトル通りインタープリター(=同時通訳)なのだが、彼女とシークレット・サービスのケラー(ショーン・ペン)が、
このテーマを2時間かけて翻訳してくれます。ちょっと複雑で難解な点もありますが、DVDの特性を活かしつつ、
じっくりと鑑賞頂きたいものです。『ミュンヘン』 『バベル』 『ブラッド・ダイヤモンド』を観て感動された貴方に、ぜひぜひのお薦めの一本。
P.S
DVD特典で、シドニー・ポラック監督がワイドスクリーンとパーン・カットとの違いを熱く語っていますが、一見の価値ありです。
すばらしい!良作!
おすすめ度 ★★★★★
今回の発売がすごく嬉しいです
。これを知らずして新しい時代のエンターテイメントは語れません。
すばらしいものだと感じましたので☆5評価としました。
概要
ニコール・キッドマン、ショーン・ペンという2大実力スターが共演した社会派サスペンス。ニコールが演じるシルヴィアは、国連に勤務する同時通訳で、アフリカのクー語(架空の言語)を担当する。そのクー語が使われる小国マトボ(こちらも架空)の大統領が国連で演説することになるのだが、シルヴィアは大統領が暗殺するという情報を聞いてしまう。シークレット・サービスのトビンがシルヴィアを護衛するが、彼女も怪しげな行動をとる。
マトボの国情には、アフリカ各国の悲惨な現状が凝縮されており、突然の激しいアクション場面とともに、随所で背筋を凍らせる。全体の展開はやや複雑で不可解な点もあるが、シルヴィアの素性が明らかになるにつれ、彼女とトビンが悲痛な心を慰め合う物語も生まれ、感情移入しやすくなっていく。それでいて、深いラブストーリーになだれ込まないのはリアル。主演2人は、いつもながらの名演(とくにクライマックスのペンの切ない表情は絶品!)だが、最も印象に残るのは、ニューヨークの国連本部内の映像だろう。ドラマに真実味を与えるのはもちろん、劇映画としては初めて撮影が許可されたという点でも、一見の価値はある。(斉藤博昭)