大人は判ってくれない/あこがれ Blu-ray
この映画は学生の頃にフィルムセンターで観たが、その時はヌーベルバーグが何なのか、その概念も解らず只管スクリーンを凝視していた。あれから30年以上経過している。多少の不安はあったが主人公が遊戯施設で旋回する辺りから鮮やかに記憶が甦った。観終わっても何ら古さを感じない。それは観る側の感性に訴えるからであり、プロットでストーリーを追うような映画ではないのだ。
弱冠27歳のトリュフォーが自分の感受性を信じ、その感覚を優先して撮った映画である。ロケを中心としたリアルな子供目線で捉えた映像が瑞々しい感覚で映し撮られた日常風景に違和感なく溶け込む。それは後半になると疎外された孤独な心象風景のように映る。それまでの流れで次第に少年に感情移入する事でそのように見えてくるのだ。そんな心理的効果をもたらす演出であり単なる閃きや思いつきではない。
少年は不仲な両親から愛されてないのを自覚している。悪戯や失敗を繰り返すのは、かまってほしいが故の愛情を渇望する事への裏返しなのだ。だが両親はそんな彼を理解しようとせず厄介払いする。その理由は更生施設を巡る段階で判明する。この母親は主人公の妊娠を望んではいなかったのだ。堕ろす事まで考えていた上辺だけの母親で愛情など無い。少年院を訪れた際も養育を放棄し冷酷に突き放す。最後の最後まで母親に裏切られる心境を察するに余りある。社会から疎んじられ親からは見放され、失意のうちに自殺してもおかしくない。縋るものが無くなり人間不信となった以上、頼れるのは自分だけである。この厭世感から逃れるべく脱走を図るのは当然の帰結。
トリュフォーは柔軟な姿勢で俳優の自然な反応を引き出す事に専念し最良の場面を抽出した。それがラストである。彼は直走る。だが眼前に現れた海という演技を超越した存在に対応できず、困惑した彼は振り向いて監督の指示を仰いだのだ。監督もこの後戻りできない状況を理解した上で一定の方向性を与えたが現実が演出を上回る事態が思惑以上の効果となって、ストップモーションのラストカットとして見事に繋がった。観る側もその現実の厳しさや逃れられない運命を感じ取り、予定調和を潔しとしないヌーベルバーグの真骨頂のような結末に衝撃を受ける。
【雑感】
即興演出を前提としながらも不確定要素が整合性を保って奇跡的に収まった稀有な映画である。音楽も主人公の心情に寄り添うように響き極めて印象深い。公開されて55年経過するが未だ色褪せない。才気煥発だった27歳のトリュフォーだからこそ撮れた映画だろう。
弱冠27歳のトリュフォーが自分の感受性を信じ、その感覚を優先して撮った映画である。ロケを中心としたリアルな子供目線で捉えた映像が瑞々しい感覚で映し撮られた日常風景に違和感なく溶け込む。それは後半になると疎外された孤独な心象風景のように映る。それまでの流れで次第に少年に感情移入する事でそのように見えてくるのだ。そんな心理的効果をもたらす演出であり単なる閃きや思いつきではない。
少年は不仲な両親から愛されてないのを自覚している。悪戯や失敗を繰り返すのは、かまってほしいが故の愛情を渇望する事への裏返しなのだ。だが両親はそんな彼を理解しようとせず厄介払いする。その理由は更生施設を巡る段階で判明する。この母親は主人公の妊娠を望んではいなかったのだ。堕ろす事まで考えていた上辺だけの母親で愛情など無い。少年院を訪れた際も養育を放棄し冷酷に突き放す。最後の最後まで母親に裏切られる心境を察するに余りある。社会から疎んじられ親からは見放され、失意のうちに自殺してもおかしくない。縋るものが無くなり人間不信となった以上、頼れるのは自分だけである。この厭世感から逃れるべく脱走を図るのは当然の帰結。
トリュフォーは柔軟な姿勢で俳優の自然な反応を引き出す事に専念し最良の場面を抽出した。それがラストである。彼は直走る。だが眼前に現れた海という演技を超越した存在に対応できず、困惑した彼は振り向いて監督の指示を仰いだのだ。監督もこの後戻りできない状況を理解した上で一定の方向性を与えたが現実が演出を上回る事態が思惑以上の効果となって、ストップモーションのラストカットとして見事に繋がった。観る側もその現実の厳しさや逃れられない運命を感じ取り、予定調和を潔しとしないヌーベルバーグの真骨頂のような結末に衝撃を受ける。
【雑感】
即興演出を前提としながらも不確定要素が整合性を保って奇跡的に収まった稀有な映画である。音楽も主人公の心情に寄り添うように響き極めて印象深い。公開されて55年経過するが未だ色褪せない。才気煥発だった27歳のトリュフォーだからこそ撮れた映画だろう。
続・人間万葉歌~阿久悠 作詞集
未使用の商品が届きました。名曲秘話、名曲解説の厚い本が入っていて、楽しみも倍になりました。未発表の作品、新しいアレンジなど、知らない曲も同時に楽しむことができました。ありがとうございました。
ナツメロファンには最高の宝物になりそうです。
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フランソワ・トリュフォーDVD-BOX「14の恋の物語」[I]
フランソワ・トリュフォーの自伝的な映画とも言えるアントワーヌシリーズ+短編作の5部作です!
年上の女性が気になって悪戯をする男の子のお話『あこがれ』
トリュフォーの処女作であり大傑作の『大人は判ってくれない』から『アントワーヌとコレット』『家庭』『逃げ去る恋』のアントワーヌシリーズ!
少々、高めであるが…、トリュフォーファンなら損はないでしょう!
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トリュフォーの処女作であり大傑作の『大人は判ってくれない』から『アントワーヌとコレット』『家庭』『逃げ去る恋』のアントワーヌシリーズ!
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大人は判ってくれない [DVD]
繊細すぎる魂と言葉に出来ない怒りに突き動かされ
「不良」のレッテルを貼られてしまった少年の姿を
愛情とユーモアを持って描いた作品であります。
(痛快さと悲しさが共存するラストシーンも印象的です。)
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愛情とユーモアを持って描いた作品であります。
(痛快さと悲しさが共存するラストシーンも印象的です。)
大人は判ってくれない―野火ノビタ批評集成
「幽白をはじめとした富樫義博作品」「エヴァ」が少しでも好きな人は絶対に読むべきです!エヴァの登場人物や監督自体統合失調症であるといった見解は一見奇異ではありますが、読み進めていくうちにとても納得します。そして、富樫義博の(ある意味での)崩壊から復活、再生までの事象が評者流に分析され、とても読み応えがあります。やはり作品に対しての思い入れがないと、ここまで書けないと思います。放送から年数のたった今だからこそ再び自分の好きな作品に想いをはせる意味でも必見です。