沙村広明さんというと、「エログロをオシャレな感じに描いてて抵抗を感じる」という方も恐らく少なくないのではないでしょうか？自身も正直な所、彼の描かれるあまり必要性の無いような性描写やサディスティック描写には長い間軽度の抵抗を感じてしまっていました。

しかしながらこの作品は”沙村広明さんが超真面目に短編を練るとこういった傑作が出来る”という可能性を十分すぎるほどに示してくれた一冊だと思います。舞台は1930年代ソビエト連邦カレリア共和国、主人公は素性が謎に包まれた車椅子の少女とそれに仕えるように振る舞う男性。
そしてこれでもかというくらいに詰め込まれた綿密な時代考証やロシア的な専門用語の数々、そして物語の伏線と、それらが全て一つにまとまる非常に気持ちのよい結末―――。

一部では無駄に引き伸ばしが続くマンガ業界ですが、能力のある人物が単行本一冊というページ数でここまでの作品を描けるというのはとてつもない事であり、ベテラン作家となってもまだまだ衰えない、寧ろその才能が更に磨かれているとまで感じさせてくれる一冊でした。

人物名がロシア語ばかりで読んでいる最中は頭の中がゴチャゴチャしてくるという弊害はありますが、なんと単行本の最後には丁寧に人物一覧と、彼らが劇中で何をしたか、正体はなんだったのかという解説ページがついており、更には沙村広明さんが一体どのような流れでこの作品を描くことになったのか、どのようにして構想を練ったのかというあとがきまであります。

漫画を買って値段以上の価値があると思えたのは久しぶりでした。ロシア好き、沙村広明さん好きな方は買って間違いなく損はありません。

この作者さんの他の作品は未読です。評判も知りませんでした。表紙と裏表紙の説明で購入しました。
絵はとても魅力的だと思えたのですが、他の方が書かれているように、代償を払う部分の描写が受け入れられませんでした。しかもなんで相思相愛みたいになってしまうのか。ストックホルム症候群？
ハッピーエンドなんだから……と自分に言い聞かせても、再度読む気になれません……。
気楽に人に薦めることはできませんが、印象に残った作品と聞かれたら間違いなく挙げると思います。

PS3版を買いましたが売ったのでPC版を買い直しました。
steamのセールで2000円でした。

XBOXっぽいコントローラーを購入するとどのゲームでも便利で使いやすいです。