日本を呪縛した八人の政治家―政治改革を阻んだ永田町の妖怪
いわゆる政界裏話。興味深い話が読める。小渕元首相の死とそのあとのドタバタ劇や現在の政権への批判にはうなずけるものの、かといって平野氏をはじめとする野党がそれよりマシとは必ずしも言えない。昨年の総選挙以来、二大政党制なる言葉があたかも現実であるかのように一人歩きしているが、そうではなかろう。大政翼賛化のなかでの内輪もめにすぎないのではないかと私には思える。この本に掲載されている写真を見てあらためて日本の政治家たちはほんとに人相が悪いと再認識した。平野氏も例外ではない。
小鳥と柴犬と小沢イチローと ー日本を面白くしてしまった政治家47人の罪と罰
政治の本というとは、天下国家を語るもの。そういう常識を上杉隆は飛び越えた気がします。
考えてみると政治家って実はアイドルと同じ人気稼業。ところが普段のニュースではその政治家の人となりなんてのは全く伝わってきません。アイドルや歌手が歌番組でどんなに活躍してもわかるのは歌唱力だけ。彼らがトーク番組に出演した時に「あれっ? お高くとまっているのかと思いきや意外に面白いヤツじゃん」などと感じるあの瞬間を思い出して下さい。
上杉隆の『小鳥と柴犬と小沢イチローと』はそいういう本です。47人の政治家について上杉隆が日々付き合った感想を独特のゆるい文体で描き出すものになっています。
ここしばらく上杉氏の興味は小沢一郎に対する大手マスコミからの総攻撃を批判することにあったようなので、タイトルにも小沢氏の名前が入っていますが、別に一冊まるまる小沢論みたいなものではなく、むしろ『日本を面白くしてしまった政治家47人の罪と罰』というサブタイトルの方がよく本の内容を表しています。ですからどちらかというとこのサブタイトルが刺さった方に強くお勧めしたいと思います。
大真面目に天下国家を論じる本が読みたいのならこの本はちょっと違うかもしれませんが、逆に政治家の素顔が垣間見られる本なんてのは空前絶後なのではないでしょうか(たぶん)。政策や発言がどんな人格を背景になされているかというのは、結構重要なポイントであるようにボクは思います。そういう意味ではこの本は得難い一冊です。
あ、ちなみに読むなら早い方が良いと思います。基本的には生ものです。2010年という今読んでおく(まあ年が明けたらダメというものでもないですが)方が美味しく召し上がれると思うのです。
新説 東京地下要塞 ― 隠された巨大地下ネットワークの真実
秋庭俊さんの東京の地下空間に関する本は,全て読んできました。
今回は,テーマを絞り,歴史的経緯から,地理的な位置関係まで,
かなり仔細に,具体的に文章が書かれています。
地理的技能,読図力を身につけた人ならば,
前回までの本を読めばわかる内容かもしれませんが,
より具体的な記述を求めていた方,文章の抽象さを批判されていた方も,
今回の文章を読めば,何を言いたいのかはよくわかるかと思います。
しかし,国策として,読図力が国民から奪い取られていることに,
日本人は早く気づくべきでしょう。
カーナビばかりに慣れていると見落としがちな,
都市の構造に改めて注目したくなる,東京人必読の教養書です。
官愚の国
「日本中枢の崩壊」(2011年)古賀茂明を読むとあと数年の猶予があるように思われるが、本書に来ると「傾き続けてこの先どこまで行っても浮かぶ目無し」と考え改める。
本書は内部告発の一種と言われるだろうが、告発というのか国民不在の利益闘争の茶番山盛り状態では告発の域を超えている。
原発を監督する部門が同じ役所の下にあった。一旦事が起きると糊塗されていたシステムがモグラ叩きに出る。こういった人災の被害者となる国民の方は堪らない。税を被り、放射能まで被る。天下りを一掃する言うから期待した政党が、直ちに宗旨替えの腰砕けとなる程度の国には良く似合うというべきか。
本書を見ても官僚制度の内部からの改革は全く期待できない。というより、一義的に改革とは自己反映のために肥大してきた独法などを切り捨てるに過ぎない。
今後数年で国の借金が国民の金融資産を上回り、2011年のギリシャのような状況が視野に入るまで5年か?10年も持つまい。その時ようやく山県有朋以来の大改革とマスコミが騒ぐには時期を逸している。その期に及んで年金も失っているだろうけど、日本人は改革と言うんだろうか。
「われら富士山」お山の大将で、同じ学校の先輩後輩がリレーするシステムを優秀だからなんて社会が続く異常がとうとう崩壊する事態となるところ。