マンガ 物理に強くなる (ブルーバックス)
高校の野球でエースで4番の松山さとるは勉強が出来ず、このままでは物理で赤点をとってしまう。そんなときに知り合った久保聡美は物理が得意。さとるは聡美に物理を教えてもらうことになるのだが…。
原作者は埼玉県の高校の物理教師。力学を中心に物理学を分かりやすく紹介する漫画作品です。
私自身、高校時代は文系学生で、数学や物理の類いには随分と苦労させられました。大学入試に必要なだけと割り切ってなんとか勉強したものですが、そのとき暗記した数式などはいまやすっかり忘却のかなたです。
しかし、30歳を越えた頃から、入試勉強ではない本当の知識というものに対して俄然強い興味がわき、と同時に高校時代の不明を恥じたものです。
以来こうした「漫画で学ぶ」式の書物を思い出したように手にします。
しかし今回は、物理の仕組みを垣間見ようと思って手にした書ではありましたが、生きるうえでの姿勢みたいなものを今一度思う機会も与えられた気がします。
本書の終盤でさとるはこう自分に言い聞かせます。
「大学受験のために嫌いな科目をバカ暗記する。(中略)目の前しか見ていない。
目の前だけを見てるんじゃなくてもっと先まで見ることができれば面白いんじゃないか。
本当に先のことを考えるなら今を楽しんでいないとダメってことかな」(221〜222頁)
人生のとばぐちに立ったばかりの高校生にはずっと先の人生にまで思いをはせることが難しいものです。だからこそ、聡美に出会う前のさとるのように近視眼的に「乗り切る」ことを考えがちです。
人生を半ば過ぎた今の私には、自身の高校時代のそんな無知を、許されることなら戒めてやりたい気持ちがあります。
僕と日本が震えた日 (リュウコミックス)
何々県産の食品は放射能を含んでいるから危ない、
何々県の観光は避けた方が良い。
大震災以来こんな話を報道でも日常でも耳にする。
けれど、何が本当に危険なのか、どこの情報を信じれば
いいのか、正確に答えられる人はいなかったような気がする。
だからこそ、この作品はとてもためになった。
放射線が検出されたら即危険ではないこと、でも安全と断言も
できないこと、消費すれば経済が回る!とも言い切れないこと…。
出版の話も興味深かった。
こんな大きな被害が出れば他国なら、「本なんか出してる場合
じゃない、全力で復興だ」となるだろう。
けれど日本人は良くも悪くもまじめに、何とかして予定通りに
書籍を出版しようと頑張った。
(実は自分も出版事情がどうなるか心配していた一人である)
そこに「日本人らしさ」を見た気がする。
今日明日じゃ何も変わらないかも知れない。
でも一年、二年後は確実に変わっている。
日本を、日本人を信じている。
コミック 銭 1巻 (Beam comix)
1巻では漫画、アニメ、コンビニの各業界を
銭の面から、気持ちよく解明しています。
単行本の原価は?
アニメ業界が抱える闇とは?
コンビニ店長の理想と現実って?
「銭」とか「金」とかいうものに、 並々ならぬ関心を
抱いているのは 私だけではないことでしょう。
あの業界、どうやって食ってるの?
果たして儲かってるの?なんてことが 気になって仕方ありません。
そんな「業界と銭」が知りたい!!という
庶民の興味に見事応えてくれるのがこの作品。
ねちっこいとも思える取材力と 説得力のある展開で、
「銭」や「金」の カラクリが白日の下にさらけ出されています。
「銭」や「金」の話が好きな人には 劇的にお奨めの作品です。
限界集落温泉 2巻 (ビームコミックス)
1巻で集まった都会のはみだしものどもが、2巻で縦横無尽の大活躍!
元ゲームデザイナーのチョンマゲがすごい。惚れた。
人たらしを自称するだけあって、人心掌握術がハンパじゃない。
環境が逆境でも、集まってくる人間のパワーでこれだけイベントを
盛り上げることができるんだということに感動した。
あと、作者のおたく愛にちょっぴり感謝。
脇役のおたくたちは、フィギュア好きのモデラー、売れないサウンドクリエイター
漫画家の卵など、ありがちなおたく像だがどいつもこいつも味がある。
個性的って異常性がある、変わり者ばっかりなイメージだけどすげーポップだ。
あゆぽんは正直あんまり好きになれないけど。
死にたがりのネットアイドルなんて自分にしか興味なんだろうし、同情しにくい。
都会に戻った彼女が帰ってくるかどうかより、山里館の今後に注目したい。
マンガ 化学式に強くなる (ブルーバックス)
高校生用の化学の教科書を、第一章だけ抜き出して、詳しく・やさしく・丁寧に書きあげたような本です。
入門書と呼ばれる化学の本はたくさんありますが、そのほとんどは化学の概観をつかんでもらおうという意図で書かれていて説明が浅いため、読み進むにつれどんどん理解できなくなってくることがままあります。その点、本書は、最も基本的で重要な元素とモルのことに絞って書かれていて、教科書の導入部分が一冊の本になったという感じです。教科書で20ページほどで扱っているところを、263ページのマンガで解説しているのですから、単純に計算してその分かりやすさは約13倍!(ほんとうかー?) 最初の150ページほどを割いて、元素と化学式の基礎を教えてくれます(とにかく丁寧で深い!)。そして残りで、モルについて説明しています。
マンガで描かれた科学の解説物は多いのですが、マンガが解説をより分かりやすくしてくれていて、しかもスラスラ読めるようにしてくれている稀な本だと思います。私は、通勤の3時間で読みました。化学が分からないまま社会人になってしまった方にお勧めです。