科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)
評者は高校時代は「理数科」というところにいたが、「心」は一貫して文系である(だったと思う)
筆者の言うように、日本における科学への認識レベルの低さはそのとおりである。偶然であるが、
・順番ではなく、数量で比較すること(数字で考えるよう心がけること)
・「その人」ではなく、「その人の考え」で判断すること 等
は、評者も心がけていることなので、興味深かった。
ただ、科学者・技術者の研究・開発(評者はこの差をあまり意味のあるものと考えていない)について、社会に対しニュートラルであるかのように書かれているのは、少し美化しすぎているように感じた。(兵器を開発している科学者・技術者は、その使途責任を「文系」だけが負うべきと思っているのだろうか?また、素人目にも曖昧さが多い東日本大地震・福島原発関連について発表されたデータにもなんの責任もないのだろうか?学会での発表は価値が低いことは知っていたが、災害が起きる前に提起されていたそれは「科学的」に平等・公正に検証されていたのだろうか?比較の問題として「科学」の世界は他の世界に比べ平等・公正と筆者は主張するが、その影響力の大きさから考えると、決して看過すべき問題が内在されていないとは言えないと思う。)
# とは言っても、評者は喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)を結構感動して読んだのだが
すベてがFになる (講談社文庫)
騙されすぎて最後なんか特に笑っちゃいましたねえ。後半の面白さは半端ないですよ。
正直犯人に関しては「そんなの当てられるわけねえだろ」という反論もありますが、実に緻密にトリックやストーリーが練られていて、そして当初そんなに重要ではないはずの人物が後になって重要な役割を果たすなどデビュー作としてはまさに規格外の作品であると言えます。いやあ、しかし、騙されれ気持ちのいい作品でしたね。
実験的経験 Experimental experience
最近の著作で著者が主張してる、いわゆる一般概念や常識みたいなものについての疑問等が小説という形で出された。
読みたい人が買えば良いと言う事か。
想定を外すとか、疑問をそのままにするとか、読者の事を考えてるのか考えてないのか良くわからない。
結果的に彼の戦略は当たり、ベストセラー作家になったわけだから、考えを実践したと言う事だと思う。
まあ、ふつうこういう事は隠しておくものだが、作家の真摯な態度ゆえか、小説で著わしてしまった。
コア(熱狂的ではなく)なファンは、「そういうと思った」と言う事だと思うが、理系ミステリー位の理解をしてるファンは期待はずれではないだろうか?
編集担当が固定観念や常識で、著者は非(不)常識という対比が盛りだくさんで出てくる。
「言っても理解してもらえるとは思えない」けど出版する事が驚きだ。
私は楽しめた。
つぶやきのクリーム The cream of the notes (講談社文庫)
安易な自己啓発を求めるのなら、他の本が良いかもです。
氏の醸し出すオリジナリティを求めるのなら、おすすめです。
森先生が、余計なしがらみから離れて好き勝手に書いた(ように思えるけれど、真相は違うかも)
ように思えるような文章が心地よいです。
過去出版された小説・エッセイなど数十冊に渡り読んできましたが、
本書は「意外」な切り口だったと思います。
こんなに読んできたのに、未だに「意外性」を出せるのが凄いなと思いました。
工学部・水柿助教授の解脱 The Nirvana of Dr.Mizukaki (幻冬舎文庫)
森博嗣さんの作品は大半読んだが、この「水柿助教授」がいちばん好きだ。
たぶん作者は書きながら、おもしろくしよう、とは考えていても、物語をつくろう、とは考えていない。
それが、新鮮。
その割に読んでいると、ひとが物語をつくるときの、
最初の種を撒く様子が見える気がして、興味ぶかい。
たぶん、乙一の「小生物語」とおなじ編集者が携わった仕事だろう。
この「妄想(暴走?)日記」シリーズは、いずれひとつのジャンルになればいいな、と思う。
つぎはだれかな?
森見登美彦さんなんか、おもしろそうだ。