月を流さず 御算用日記 (光文社文庫)
読む人により、好き嫌いが分かれそうです。
コーヒーでいえば、ミルクいっぱい、砂糖いっぱいのカフェオレ、といったところです。
大変甘いです。
今回潜入した藩でのトラブルも、収まるべくして収まり、横暴な二人にふりかかった難題もまた、収まるべくして収まります。
そして、ラストの心地よい余韻。
もっと苦味のぴりりときいた時代小説を読みたい人には、向かないかもしれません。
天下を善くす: 御算用始末日記 (光文社時代小説文庫)
数之進の姉で一角に「着足りぬ姫」と言わしめた冨美が、数之進の上司である鳥海左門と夫婦になり、
また、数之進が田植えをする若い百姓女達の中に行方不明であった自分の想い人「世津」を見出した場面で前作は終わっていた。
てっきり前作が最終回とばかり思っておりましたので続編が出たことを知り早速買って読ませて戴きました。
天璋院に召し出された数之進と一角が80歳の老人となっている書き出しに驚き、さすがにこれが最終編だと思いました。
ところがどっこい、50年の歳月を経ても数之進と一角の名コンビはかくしゃくとして健在でした。
時代背景は戊辰戦争も終盤、江戸城も天璋院によって無血開城される段取りが終わり、
徳川慶喜も静岡に移封されており、まさに武士の地位や生活が混沌としている時代。
そして「食い足りぬ姫」の三紗も「着足りぬ姫」の冨美もすでに亡くなってこの世にいませんが代役はちゃんといました。
彼女たちの孫、「華絵」と「薫子」がちゃっかり受け継いでいます。
そして、またしても305両もの借財が数之進に降りかかってきます。
天地に愧じず (光文社文庫)
「誠実なスパイ」とはまるで形容矛盾であるが、本書の主人公・生田数之進という侍は、そういう人物である。姉二人がつくった巨額の借金返済のために幕府の密偵・御算用者となる羽目に。お役目は算勘の才を生かして諸藩の勘定方に潜入、内情を探ること。生来の生真面目な性状の数之進は藩士を路頭に迷わすような幕府の陰謀に加担できずに悩むが、潜入先の高野藩内にも怪しい動きが…。真面目で純情、容貌も冴えない。しかし抜群の記憶力と推理力を持つ数之進が、親友の武芸百般・早乙女一角とともに命を張って陰謀に挑む!
食い道楽で借金ばかりつくる「困ったちゃん」の姉のキャラクター造型にも深みがあり、かつ一角との友情が爽やか。読後感の爽やかな痛快時代ミステリ。