戦場でただ「刺激」のために射殺された捕虜の死に加担したカメラマンは、故郷の村に死に場所を求めていたのだろう。彼の死と、彼がかばった娘の死と、その写真を見ている彼の恋人の夫の死と、三つが時間を入れ替えてつながっている映画だ。雨が降る前に。
神さまが地上においたものたちが憎しみあうことは、絶望的にわからない。沈黙の修行をしていた若い男が畑と空に向けていた笑みほど幸福なものはこの世にないだろうに、そうじゃないものばかり欲しがる地上の餓えは、どうしてもわからない。
時の円環おすすめ度
★★★★★
第一部はアルバニア人の女が殺されるまでの話、第二部はその女の写真を受け取った女性編集者の話、第三部はその女性編集者と別れた男性カメラマンが故郷に帰り、アルバニア人の女を助けるまでの話。時間は円環を成して進む、映画は円環を成す。全体は雨が降ってから、雨が降るまでの話である。マケドニア人とアルバニア人が一触即発の状態にある村（第一部と第三部）と、ロンドン（第二部）が舞台。
中心になるのは第三部である。カメラマンの男は故郷に帰り、かつて想いを寄せていた幼なじみに会いにいく。彼は捕虜を見殺しにしてしまった自分を悔い、カメラマンの仕事から離れたのだ。村に着くと、村は分裂しており幼なじみの女は彼を避ける。そして村で事件が起きる。アルバニア人の女が、マケドニア人の男それも彼の兄弟を殺してしまう。彼はジャーナリストとして戦場を知り平和を望んでいる、そのためか彼は中立を守るために傍観する。しかし夜中幼なじみの女が訪れ、犯人である自分の娘を助けてほしいと彼に頼む。女は言う、「観てるだけね」。
男は気付く、中立であることは傍観していることによっては果たされない。行動し導くことだけが、中立と平和をもたらす。彼は想いを寄せた幼なじみのために娘を助けるのではない。カメラマンの自分がとっていた態度では充分でないことを知ったからこそ、兄弟を殺したアルバニア人の娘を助けるのである。中立と平和のために行動した彼の行く末は、本編で確認していただきたい。
湖畔に寄り添う教会、山の空を映す青い湖、落ち着き休らう田舎の山村、放牧されている羊たちの群れ、丘からの眺め、山の背から覗く夕陽を透かす雲..........美しい風景も魅力的な良い映画です。
終わりのない哀しみおすすめ度
★★★★★
バルカン半島、マケドニアに根深く残るアルバニア人との民族対立。ドキュメント出身のマケドニア人監督によるこの長編第一作は様々な賞を獲得し傑作と評された。三部構成のオムニバスでありながら時間がひとつに結ばれる映画的手法も魅力的だが、それ以上に妥協のない物語を描き出す映像のインパクトに圧倒される。マケドニアの田舎の風景に時代を感じつつも、劇中流れるビースティ・ボーイズの「SO WHAT'CHA WANT」に映画の現実が決して古い話ではないことを印象付けられた。
とにかく良い映画です。おすすめ度
★★★★★
学生のときに映画館で観て以来、ずっと一番好きな映画に君臨し続けている印象深い映画。
日常となってしまった民族間のすれ違いと対立という重いテーマを、淡々とした演出で静かに追っていく作品。その押えた感じが逆に生々しくリアルで切ない気持ちにさせる。
雨が降り出す前の一時の場面とそこに流れる印象的な音楽が、不安定な気象状況に人間社会の情勢を重ね合わせ、複雑に交錯する人と時間の関係も統括していて、最後はドラマチックな印象を残す。
この映画はとってもおすすめ。サントラもGood!
凄いの一言
おすすめ度 ★★★★★
言うまでもなく最高峰
。これを知らずして新しい時代のエンターテイメントは語れません。
ご参考になれば幸いです。大変お勧めですよ！！
