数十年にわたる人工降着盤云々にまつわる宇宙開発の歴史を連作短編形式で描いています。連作短編形式にすることによって、政治や技術開発にまつわる問題を背景情報と割り切って読者に提示することで、テンポの良い物語に仕上がっていると思います。
知的存在とは何かおすすめ度
★★★★★
小型ブラックホールが発見され、いずれ太陽に衝突することが判明・・・というと小松左京『さようならジュピター』みたいだけど、ここからが大違い。なんと、そのブラックホールに人工的な降着円盤を作り、得られたエネルギーを太陽系内に伝送するという壮大なエネルギープラントが建設されるという舞台設定。
そのもとでいくつかのエピソードが語られるが、共通するテーマに「謎の信号の受信」と「人間とは異なった知的存在」というものがあるようです。
『ウロボロスの波動』:巨大環状構造物<ウロボロス>で、人工知能が原因で死亡事故が発生。死んだ博士は異星間通信の研究に取り組んでいたようだが・・・。
『エウロパの龍』:木星の衛星エウロパの海氷下で生命探査を行っていた潜水艇が、龍に襲われたという連絡を残して消息を絶つ。調査に向かった別の潜水艇でレーザーレーダーとソナーを補完的に用いて海中映像を得る装置に異常が生じる・・・。
『エインガナの声』:ブラックホールだけで出来上がっているとしか説明できない矮小銀河エインガナ。この謎を解くため、太陽から遠く離れて精密電波観測が行われ、その銀河から非常に志向性の強い重力波が検出される・・・。
『キャリバンの翼』:小型ブラックホールにナノマシン投入実験が行われ、時空の狭間に不思議な秩序が存在することを発見・・・。
と、このようにいかにも謎めいたエピソードが重ねられ、いよいよ物語が太陽系外にも・・・という、これは凄い作品です。新たに追加された小川一水さんの解説も見逃せない。いよいよ続編「ストリンガーの沈黙」も出ましたね!
続編を読みたいです!おすすめ度
★★★★★
骨太な名前の作者ですが、その名から受ける印象のように、作品は丁寧に書きこまれています。
あえて分かりやすくジャンルわけすればハードSFに分類されるのではないでしょうか。
しかし難解な設定の割には、それに拘束されない分かり易いストーリーが非常に良かったです。
小型ブラックホールを利用する為に組織されたAADD(人工降着円盤開発事業団)に絡む物語を中心とした連作短編で、それぞれの作品のテーマは少しづつ異なりますが、希望がもてる前向きな物語は読後感も良いです。
続編も出版されるようで、また、同シリーズの未書籍化作品もあるそうなので、文庫化された時には、ぜひ読みたいですね。
はっきりいって、すさまじい出来です。
おすすめ度 ★★★★★
届いてからずっと気に入っています
。値段の割には上出来。
ご参考になれば幸いです。大変お勧めですよ!!