ヒップの極意 EMINENT HIPSTERS
カーヴァーやオースター、マキナニー、サリンジャーと通底するテイストのある読み物になっていて嬉しい。憂鬱と毒吐きは、カーヴァーに近いかな。皮肉ではボネガットも強く入っている。
松任谷由実が昔、「東京近郊に住んでいたから、東京への憧れが強くなった<記憶では八王子>」という意味のことを言っていたが、フェイゲンも同様に、NYから少し離れた街に住むユダヤ系アメリカ人として、アメリカの、New Yorkへの、コアな音楽としてのJazzへの憧れを強くもったのかもしれない。イギリスや日本に対する記述が、アメリカ人のステレオタイプ的でやや興をそぐけれど、彼が注目し続けているのは「アメリカの<何らかの>中心=Hipster」なので、そうなるのである。そしてその傾向は年を経る毎に強くなっている(The Nightflyまでは非アメリカ的なエキゾチックな旋律やリズム、楽器を取り入れて成功していたけど、Kamakiriad以降はすっかり影を潜めた)。
当然ながら、フェイゲン個人の体験をもとにしたエッセイなので、その国や、その街に永く住んでいないと分かりづらい感覚は、やはりある。「わたしはジーン・シェパードのスパイだった」にそれは顕著で、実物をリアルで、その場で見ていない日本人には遠いはなしだ。けれど、全体を通じて軸となる音楽についての多くの話は、読み手側がジャズやブルース、R&Bを聴き込んでいれば同時代人として疑似追体験的なイメージが湧いてくる。自分が聴いていた音楽を、フェイゲンがどう見たか(聴いたか、位置づけているか)を比較しながら読むのは愉しい。
過去を叙事をもって情感をつむぎながら物語にする手法と(SDもね)、その中に、ときおり読み手に、不条理ギャグ的に「プッ」と吹き出させるような冗談/皮肉/毒舌が混じる。ときに悲劇もだ。「ボズウェル流」が前者が強調された1編で、「エンニオ・モリコーネとの会話」は、モリコーネに深い敬意を表しながらも、まるごとギャグである。「ディークス・オブ・セプテンバーとともに」のフェイゲンの妻、リビーの息子(フェイゲンの子ではない)の死の記述は痛い。しかしツアーの日常では「ウォルターが最近さかんにバナナマンの話をする」とも。1編1編の内容もシリアス、ユーモア、皮肉、しょーもないぼやきが織りなす本書の構成の相似形になっていて、カーヴァーの短編集1冊の読後感に似た手応えがあった。
翻訳は、さぞかし骨の折れる仕事だっただろうと、訳者にも敬意を。
松任谷由実が昔、「東京近郊に住んでいたから、東京への憧れが強くなった<記憶では八王子>」という意味のことを言っていたが、フェイゲンも同様に、NYから少し離れた街に住むユダヤ系アメリカ人として、アメリカの、New Yorkへの、コアな音楽としてのJazzへの憧れを強くもったのかもしれない。イギリスや日本に対する記述が、アメリカ人のステレオタイプ的でやや興をそぐけれど、彼が注目し続けているのは「アメリカの<何らかの>中心=Hipster」なので、そうなるのである。そしてその傾向は年を経る毎に強くなっている(The Nightflyまでは非アメリカ的なエキゾチックな旋律やリズム、楽器を取り入れて成功していたけど、Kamakiriad以降はすっかり影を潜めた)。
当然ながら、フェイゲン個人の体験をもとにしたエッセイなので、その国や、その街に永く住んでいないと分かりづらい感覚は、やはりある。「わたしはジーン・シェパードのスパイだった」にそれは顕著で、実物をリアルで、その場で見ていない日本人には遠いはなしだ。けれど、全体を通じて軸となる音楽についての多くの話は、読み手側がジャズやブルース、R&Bを聴き込んでいれば同時代人として疑似追体験的なイメージが湧いてくる。自分が聴いていた音楽を、フェイゲンがどう見たか(聴いたか、位置づけているか)を比較しながら読むのは愉しい。
過去を叙事をもって情感をつむぎながら物語にする手法と(SDもね)、その中に、ときおり読み手に、不条理ギャグ的に「プッ」と吹き出させるような冗談/皮肉/毒舌が混じる。ときに悲劇もだ。「ボズウェル流」が前者が強調された1編で、「エンニオ・モリコーネとの会話」は、モリコーネに深い敬意を表しながらも、まるごとギャグである。「ディークス・オブ・セプテンバーとともに」のフェイゲンの妻、リビーの息子(フェイゲンの子ではない)の死の記述は痛い。しかしツアーの日常では「ウォルターが最近さかんにバナナマンの話をする」とも。1編1編の内容もシリアス、ユーモア、皮肉、しょーもないぼやきが織りなす本書の構成の相似形になっていて、カーヴァーの短編集1冊の読後感に似た手応えがあった。
翻訳は、さぞかし骨の折れる仕事だっただろうと、訳者にも敬意を。
ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法
冨田ラボこと冨田恵一氏による、一冊丸ごとドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』に関する解説書。というよりも「研究書」と呼んだ方が良いほど徹底的な分析がなされており、氏のスティーリー・ダン及びドナルド・フェイゲンへの深い傾倒ぶりと愛情が感じられます。
「ポップスのなかでもとびきり良質な作品は、そろそろクラシック音楽を長く定着させたような作法で扱う必要が出て来たように思っている」これが冨田氏の本書を手掛けた動機であり、不肖筆者も日ごろ強く感じていることと完全に一致します。
まさにポップ・マエストロの冨田恵一氏。その筆致は予想以上に知的で論理的であり、今後も同種の著作が期待されます。
「ポップスのなかでもとびきり良質な作品は、そろそろクラシック音楽を長く定着させたような作法で扱う必要が出て来たように思っている」これが冨田氏の本書を手掛けた動機であり、不肖筆者も日ごろ強く感じていることと完全に一致します。
まさにポップ・マエストロの冨田恵一氏。その筆致は予想以上に知的で論理的であり、今後も同種の著作が期待されます。
Nightfly
名盤です。レコードもCDも持ってますが、デジタルリマスターされた音を体験したいです。スティーリーダンのアルバムはすべてデジタルリマスターされたのに・・・
DVDオーディオ持ってないし^^;
レコード会社の人! デジタルリマスターしないのは何故ですか?
この名盤を最高の音質で聴かせてくれ!
DVDオーディオ持ってないし^^;
レコード会社の人! デジタルリマスターしないのは何故ですか?
この名盤を最高の音質で聴かせてくれ!
Sunken Condos
取り立てて音の変化はないというか、相変わらずスティーリー・ダン時代に完成させた1980年の「Gaucho」の音の延長戦上にあるようなサウンドだ。
彼にとってはこの手の音が完璧であってここから外れることはないってところだろうな。
悪くはないと思うし、ファンの僕なんかは不満はないのだが、新しさはない。
録音も完璧、ファンにとっては十分満足な作品だ。
彼にとってはこの手の音が完璧であってここから外れることはないってところだろうな。
悪くはないと思うし、ファンの僕なんかは不満はないのだが、新しさはない。
録音も完璧、ファンにとっては十分満足な作品だ。
Kamakiriad
このアルバムは私はどういうわけか冬の早朝になると聴きたくなる。まだ薄暗いとても寒い朝に。理由は自分でもよくわからない。
超のつく名作「ナイトフライ」同様、ハンドルを握りながら聴くととてもしっくりくるアルバム。フェイゲン特有のシニカルでクールなダンディズム溢れる個性ある一枚。個人的には「SNOWBOUND」のベースがとても好きだ。
超のつく名作「ナイトフライ」同様、ハンドルを握りながら聴くととてもしっくりくるアルバム。フェイゲン特有のシニカルでクールなダンディズム溢れる個性ある一枚。個人的には「SNOWBOUND」のベースがとても好きだ。