ヒッグス粒子の謎(祥伝社新書290)
2013年2月3日の毎日新聞朝刊の「時代の風」で前岩手県知事の増田寛哉氏が「科学技術立国の拠点に」というコラムを書いていた。その内容が本書『ヒッグス粒子の謎』(浅井祥仁著)との関連ある記事だったから非常に興味深く読ませてくれた。
増田氏が書いた記事の内容を要約するとスイスのジュネーブにあるCERN(欧州合同原子核研究所)にあるLHC(大型ハイドロン衝突型加速器)で昨年ヒッグス粒子とみられる新粒子が確認されたことに触れ、さらなる研究のためには、LHCを上回る性能の次世代加速器「国際リコアライダー(ILC)が必要と述べている。
このILCは、直線の加速器で、花崗岩層下100mに全長30kmのトンネルを掘り超電導加速器を配置する。
このILCプロジェクトは、総額8000億円、建設期間10年をめどに以前から建設地を日本の岩手県の北上山地と福岡・佐賀県境の背振山地の2ヵ所が具体的な候補地に挙げられているそうである。
増田氏は、超電導加速器で実験されてゆくことのメリットが工業製品分野だけでなく医療などにも及ぶことまで述べながら、このようなプロジェクトを日本が国際的な協力を得ながら福島原発事故で失った日本の科学技術や科学者が、今こそ気概と覚悟が求められ、それには科学技術と政策や政治をつなぐ仕組みの再構築が重要であるともと提言していた。
評者は、先に読んだ『超ひも理論を疑う』から本書『ヒッグス粒子の謎』に、興味を持ち読み終ったのであるが、本書を読み終ってすぐ増田氏のコラムを読んで感銘をうけてしまったので本書のレビューに引用させていただいたのである。
著者、浅井祥仁氏は、CERNのスタッフとして加わり、「ヒッグス粒子」発見の現場にいた研究者として少しでもこの研究を一般の人たちに知ってもらいたい意図で本書を世に出したのであろうと思う。
この研究がすすむと仲が悪かったアインシュタインの一般相対性理論と量子力学の二つを結びつける架け橋になるのではないかと著者が書いていたことが、本書を読み進むにしたがって素人ながら多少は理解できたようである。
大統一理論と超対称性粒子などから難解な余剰次元などの解説なども興味深く読むことが出来た。
浅井祥仁氏が語るヒッグス粒子発見の興奮が読者にじかに伝わってくる本書『ヒッグス粒子の謎』は、このジャンルに興味のある方にはお勧めの一冊であると評価したい。
増田氏が書いた記事の内容を要約するとスイスのジュネーブにあるCERN(欧州合同原子核研究所)にあるLHC(大型ハイドロン衝突型加速器)で昨年ヒッグス粒子とみられる新粒子が確認されたことに触れ、さらなる研究のためには、LHCを上回る性能の次世代加速器「国際リコアライダー(ILC)が必要と述べている。
このILCは、直線の加速器で、花崗岩層下100mに全長30kmのトンネルを掘り超電導加速器を配置する。
このILCプロジェクトは、総額8000億円、建設期間10年をめどに以前から建設地を日本の岩手県の北上山地と福岡・佐賀県境の背振山地の2ヵ所が具体的な候補地に挙げられているそうである。
増田氏は、超電導加速器で実験されてゆくことのメリットが工業製品分野だけでなく医療などにも及ぶことまで述べながら、このようなプロジェクトを日本が国際的な協力を得ながら福島原発事故で失った日本の科学技術や科学者が、今こそ気概と覚悟が求められ、それには科学技術と政策や政治をつなぐ仕組みの再構築が重要であるともと提言していた。
評者は、先に読んだ『超ひも理論を疑う』から本書『ヒッグス粒子の謎』に、興味を持ち読み終ったのであるが、本書を読み終ってすぐ増田氏のコラムを読んで感銘をうけてしまったので本書のレビューに引用させていただいたのである。
著者、浅井祥仁氏は、CERNのスタッフとして加わり、「ヒッグス粒子」発見の現場にいた研究者として少しでもこの研究を一般の人たちに知ってもらいたい意図で本書を世に出したのであろうと思う。
この研究がすすむと仲が悪かったアインシュタインの一般相対性理論と量子力学の二つを結びつける架け橋になるのではないかと著者が書いていたことが、本書を読み進むにしたがって素人ながら多少は理解できたようである。
大統一理論と超対称性粒子などから難解な余剰次元などの解説なども興味深く読むことが出来た。
浅井祥仁氏が語るヒッグス粒子発見の興奮が読者にじかに伝わってくる本書『ヒッグス粒子の謎』は、このジャンルに興味のある方にはお勧めの一冊であると評価したい。
よくわかるヒッグス粒子 (図解雑学シリーズ)
素粒子の標準理論と質量の起源とされるヒッグス粒子の発見を説明した一冊。
報道などで、質量の起源と言われてもあまりピンとこないところがあったが、
それはそのはず、本書を読むと、実のところ「質量とは?」「起源ってどういう事?」という問に深い意味がかくされているのに気付く。
内容は深いが文章は平明で別りやすい。
報道などで、質量の起源と言われてもあまりピンとこないところがあったが、
それはそのはず、本書を読むと、実のところ「質量とは?」「起源ってどういう事?」という問に深い意味がかくされているのに気付く。
内容は深いが文章は平明で別りやすい。
強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く (幻冬舎新書)
ヒッグス粒子を「水飴」に喩え、「もともとは質量のなかった電子やクォークに、空間をぎっしりと満たしているヒッグス粒子が水飴のようにまとわりついて、そこを通過しようとする粒子の運動を妨げる。こうして粒子は『動きにくさ』=『質量』を与えられる」と説明するのは間違っていると、『強い力と弱い力――ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く』(大栗博司著、幻冬舎新書)の著者が述べている。これは、「質量の効果」と「抵抗の効果」を混同している、質量とは「運動の状態の変わりにくさ」のことだというのだ。ヒッグス粒子の存在を予言したピーター・ヒッグスも、この喩えを嫌っているという。また、「神の素粒子」という表現も、専門家の間では評判が悪いという。なぜなら、なかなか発見できないことに業を煮やした研究者が「神(god)に呪われた(damn)素粒子=いまいましい素粒子」と名づけたのに、これではあまりに下品だと考えた編集者が「God Particle(神の素粒子)」と変えてしまったという背景があるからだ。
「素粒子物理学の目的は、この世界は何でできているのか、その間にはどのような力が働いているのかを明らかにし、私たちの宇宙の深遠な謎に答えることです。そのために多くの研究者たちが長年にわたって知恵を絞り、築き上げてきた理論が標準模型です。そしてこの理論の中で、ただ一つ未発見だったのがヒッグス粒子でした」と、著者が語っている。
「物理学は、『実験屋』と『理論屋』が互いに支え合うことで成り立っています。先行する理論が実験によって証明されることもあれば、実験で得られた結果が後から理論的に説明されることもある」。ヒッグス粒子の場合は、理論→実験の成果である。
さらに、「私は、偉大な理論物理学者には、賢者(例:アルベルト・アインシュタイン)、曲芸師(例:リチャード・ファインマン)、魔法使い(例:南部陽一郎)の3種類のスタイルがあると思っています」と、興味深い分類を行っている。
宇宙には「4つの力」が働いている。「重力」と「電磁気力」、そして20世紀に入り発見された「強い力」と「弱い力」である。ヒッグス粒子は、この新しい2つの力を説明するために考えられたものである。ヒッグスらによって予言された1964年から48年が経過した2012年7月4日に、ヒッグス粒子と思われる新粒子を発見したと発表された。
「今回の発見で、自然界がその理論(標準模型)を採用していたことがわかりました。人間が頭の中で考え出したことが、自然の基本的なところで実際に起きていたのです。人類、やるじゃないか!」と、この分野の研究者としての喜びを爆発させている。
「標準模型は、特殊相対論、量子力学、ゲージ理論(ヤン‐ミルズ理論)、対称性とその自発的破れなど、20世紀物理学の主要なアイデアを緻密に組み合わせることで構築された、人類の知の最高傑作の一つと呼んでいいでしょう」と、著者は胸を張っている。
本書の内容は、正直言って、いささかレヴェルが高いが、丁寧に読み込んでいけば十分理解できるように工夫が凝らされている。
「素粒子物理学の目的は、この世界は何でできているのか、その間にはどのような力が働いているのかを明らかにし、私たちの宇宙の深遠な謎に答えることです。そのために多くの研究者たちが長年にわたって知恵を絞り、築き上げてきた理論が標準模型です。そしてこの理論の中で、ただ一つ未発見だったのがヒッグス粒子でした」と、著者が語っている。
「物理学は、『実験屋』と『理論屋』が互いに支え合うことで成り立っています。先行する理論が実験によって証明されることもあれば、実験で得られた結果が後から理論的に説明されることもある」。ヒッグス粒子の場合は、理論→実験の成果である。
さらに、「私は、偉大な理論物理学者には、賢者(例:アルベルト・アインシュタイン)、曲芸師(例:リチャード・ファインマン)、魔法使い(例:南部陽一郎)の3種類のスタイルがあると思っています」と、興味深い分類を行っている。
宇宙には「4つの力」が働いている。「重力」と「電磁気力」、そして20世紀に入り発見された「強い力」と「弱い力」である。ヒッグス粒子は、この新しい2つの力を説明するために考えられたものである。ヒッグスらによって予言された1964年から48年が経過した2012年7月4日に、ヒッグス粒子と思われる新粒子を発見したと発表された。
「今回の発見で、自然界がその理論(標準模型)を採用していたことがわかりました。人間が頭の中で考え出したことが、自然の基本的なところで実際に起きていたのです。人類、やるじゃないか!」と、この分野の研究者としての喜びを爆発させている。
「標準模型は、特殊相対論、量子力学、ゲージ理論(ヤン‐ミルズ理論)、対称性とその自発的破れなど、20世紀物理学の主要なアイデアを緻密に組み合わせることで構築された、人類の知の最高傑作の一つと呼んでいいでしょう」と、著者は胸を張っている。
本書の内容は、正直言って、いささかレヴェルが高いが、丁寧に読み込んでいけば十分理解できるように工夫が凝らされている。