やらなきゃゼロ!――財政破綻した夕張を元気にする全国最年少市長の挑戦 (岩波ジュニア新書)
「お前はとんでもない勘違い野郎だな!」 鈴木氏は夕張市長選挙に立候補することを石原慎太郎氏に報告した際、このように言われたという。 ツルゲーネフによれば、人間の性格は2つに分かれる。「ハムレット型」と「ドンキホーテ型」である。「ハムレット」とはシェイクスピアの四大悲劇の一つ。ハムレットはおじが父親を毒殺したという疑念から、復讐を決意する。しかし、確固たる証拠もないことから、実行に移せず悩み続ける。「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」という台詞はハムレットの性格を象徴する。 一方、ドンキホーテ。騎士道小説を読みすぎて、自らを「伝説の騎士」と思い込むドンキホーテ。いてもたってもいられなくなり、遍歴の旅に出るが、その勘違いぶりで各地で騒動を起こす。時には風車を巨人と思いこみ退治するために突っ込む。 鈴木氏が都庁職員という安定した身分を捨て、夕張市長に立候補するかを悩む場面。「やりたいか、やりたくないか」、ハムレットだったら、「それが問題だ」で締めるだろう。しかし、鈴木氏はドンキホーテだった。「俺が夕張市長だ」。 冒頭の石原氏の言葉はこの鈴木氏の性格を見透かしてのものであろう。冒頭の言葉の後にはこう続いたそうだ。 「何事も勘違いから生まれる。後先を考えずがむしゃらにやるうちに、当時は『勘違いだ』と言われていた『夢』が現実になる。だから、裸一つで夕張に行く。そういうお前を俺は殺しはしない」 こうして役者と舞台は揃い、「勘違い野郎」は「夕張市長」となった。しかしながら、財政破綻した夕張では茨の道が続く。過酷な現実が待っているからこそ鈴木氏には引き続き「勘違い」をし続けてもらいたい。
自治体クライシス 赤字第三セクターとの闘い (講談社BIZ)
大鰐、飯綱、赤平・・・、自治体関係者には周知の名前が並ぶ。
いずれも財政が厳しいことで有名な自治体である。
本書は、そういう自治体の「今」を克明にレポートしたものだ。
自治体関係者には、ぜひ一読をお勧めしたい。
背筋が寒くなり、絶好の消夏法となることは保証する。
筆者が主張するとおり「リゾート法」は全き失敗に帰した政策であり、全国各地で惨憺たる結果をもたらした。リゾート法はじめバブルに踊った自治体の「一時の栄華」と「その後の塗炭の苦しみ」が報告される。
本書に紹介されている自治体の苦闘は、現在は健全経営をしている自治体にとっても、決して他人事ではない。彼らは「よそより早く」財政窮乏に叩き込まれた「先行事例」に過ぎないからだ。日本の総人口は既に減少に転じ、税収の根源である稼働人口は、さらに早いペースで減少していく。税収の「右下がり」は「既に決定された未来」である。役所のリストラが不可避であるだけでなく、市民サービスについても戦略的な「スマート・シュリンク(賢明な縮小)」が求められる。
本書は、自治体が「税収縮減時代」に対応するにあたって、「やってはいけないこと」「取るべきでない戦略」を迫力満点に描いている。極めて参考になる、優れた「過去の検証」である。そして過去の検証は、すなわち「未来からの警鐘」である。自治体関係者のみならず地域経営に関心のある人に、広く読まれるべき本と感じた。
いずれも財政が厳しいことで有名な自治体である。
本書は、そういう自治体の「今」を克明にレポートしたものだ。
自治体関係者には、ぜひ一読をお勧めしたい。
背筋が寒くなり、絶好の消夏法となることは保証する。
筆者が主張するとおり「リゾート法」は全き失敗に帰した政策であり、全国各地で惨憺たる結果をもたらした。リゾート法はじめバブルに踊った自治体の「一時の栄華」と「その後の塗炭の苦しみ」が報告される。
本書に紹介されている自治体の苦闘は、現在は健全経営をしている自治体にとっても、決して他人事ではない。彼らは「よそより早く」財政窮乏に叩き込まれた「先行事例」に過ぎないからだ。日本の総人口は既に減少に転じ、税収の根源である稼働人口は、さらに早いペースで減少していく。税収の「右下がり」は「既に決定された未来」である。役所のリストラが不可避であるだけでなく、市民サービスについても戦略的な「スマート・シュリンク(賢明な縮小)」が求められる。
本書は、自治体が「税収縮減時代」に対応するにあたって、「やってはいけないこと」「取るべきでない戦略」を迫力満点に描いている。極めて参考になる、優れた「過去の検証」である。そして過去の検証は、すなわち「未来からの警鐘」である。自治体関係者のみならず地域経営に関心のある人に、広く読まれるべき本と感じた。