(ネタバレあり)
沖田修一監督の「横道世之助」、主人公世之助の大学時代の青春の日々、そして彼と関わった人々の「今」が描かれる青春映画。
160分間の比較的長い映画だが、長さは全く感じない。
横道世之助はどこか抜けてて、うっとうしくて天然の男。
だが彼は人を大切にし、人を明るくできる男だ。
どこかにいそうな平凡な男。でも思い出すと笑ってしまう魅力的な男。
ストーリーの大半は、金持ちのお嬢様である与謝野祥子との恋愛が描かれる。
基本的にかなりコメディ
タッチで進む。吉高由里子演じる祥子もかなり天然なキャラなので二人のやりとりが面白い。
(キスするときに「キスしてもいい?」とか聞く世之助だったり、告白されてカーテンにくるまって恥ずかしがる祥子だったり)
個人的には世之助と友人の関係が面白かった。
特に綾野剛演じる加藤は二枚目で、クールで、女にもてる「嫌なやつ」なのだが、彼は加藤のテリトリーにずけずけと侵入していく。
でもそんな世之助をとまどいながら受け入れていく加藤の変化が楽しめた。
特に公園での加藤の告白→それに対する世之助の反応は胸にぐっときたり。
現在の加藤の世之助を思い出して笑いが止まらない感じとかも、綾野剛の演技含めてすごくいい。
沖田監督の演出力が光る場面も多くあった。
物語中盤で、世之助の「今」に関する決定的な情報が出る瞬間。
千春に下手な演技をさせず、「午後五時ってとこ読みづらい。」
なんてセリフを言って、ラジオでさらっと流す場面。
また、倉持の子どもが生まれて母親に電話する世之助のシーン。
おそらくこの場面で世之助は母親への感謝を伝えたかったんだろう。
でも直接言わせず、10円玉の投入量で伝えたりなどの説明過多でない演出も光る。
そしてこの作品の最大の魅力はラストの長回しシーンに尽きると思う。
世之助の人間としての魅力、青春を謳歌する世之助のその瞬間を切り取った長回し。ラストで世之助を走らすのも最高。
エンディング曲も本作の雰囲気にばっちりあってて素晴らしい。