本年07年、映画の『さくらん』を観て感動し、でも“正統派の”吉原花魁の映画も観てみたくなり、私の記憶にある限り近年の映画ではこの映画くらいだったので(『吉原炎上』もいいのですが、時代設定が江戸時代ではなく明治時代の作品なので)、久しぶりに観たくなり、ビデオレンタルで何回か観た好きな作品だったのでDVDを購入しようかな‥と探しましたが‥残念。DVDになっていないし、ビデオも廃盤なんですね‥。
謎の人物・写楽の正体を推理した映画であることと、主演のお二人の不倫報道やらで公開当時話題の映画だったので意外に思いました。
個人的には宮崎真純さんの花魁姿は(前述の映画を含めた)他の女優さんの誰よりも“圧倒的”に江戸時代の美女らしさを感じます‥だって花魁は江戸時代のスーパースターだったのでしょ?この映画の宮崎さんはまるで浮世絵から飛び出してきたかのようなんです。
他に、折檻された女郎が吊されたまま死んでいる様子だったり、出演者の江戸弁の言葉遣いや、とりわけ後半の足抜けの道行場面からエンディングまではとてもロマンティックで“江戸時代の匂い”を濃厚に感じるので、もっと再評価されてもいい作品なのでは‥と思うのですが‥。
謎の人物・写楽の正体を推理した映画であることと、主演のお二人の不倫報道やらで公開当時話題の映画だったので意外に思いました。
個人的には宮崎真純さんの花魁姿は(前述の映画を含めた)他の女優さんの誰よりも“圧倒的”に江戸時代の美女らしさを感じます‥だって花魁は江戸時代のスーパースターだったのでしょ?この映画の宮崎さんはまるで浮世絵から飛び出してきたかのようなんです。
他に、折檻された女郎が吊されたまま死んでいる様子だったり、出演者の江戸弁の言葉遣いや、とりわけ後半の足抜けの道行場面からエンディングまではとてもロマンティックで“江戸時代の匂い”を濃厚に感じるので、もっと再評価されてもいい作品なのでは‥と思うのですが‥。
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)
本作品は、出版社が主催する2011年発表作品のミステリランキングでも上位に挙げられるとともに、本格ミステリ大賞を受賞した評価の高い作品。
遅ればせながら読んでみました。
著者の作品に接するのは初めてでしたが、直木賞作家として記憶にとどめており、でも、受賞したのは、随分前だったよな−−と、プロフィールを調べてみると、1929年生まれ。
もう80歳を越えているのですね。
そんな歳を全く感じさせない、意欲作と言えます。
舞台は18世紀のロンドン。
解剖室で次々と発見される謎の死体−−という、猟奇的な内容で幕を開けます。
冒頭10数ページは、多くの人物が一度に登場してくるので、登場人物一覧を参照しながらになり、ちょっと読みづらいかもしれません。
でも、そこを乗り越えると、あとは著者の思うツボ。
死体を巡る捜査の章の合間に挟まれる、詩人を夢見て片田舎からロンドンに出てきた少年、ネイサン・カレンの運命の行く末に、惹き込まれていってしまいました。
本書が「本格ミステリ」としての本領を発揮するのは、物語も半ば、盲目の判事、ジョン・フィールディングの推理が展開していくところから。
深い洞察力をもとに導き出される仮説は、説得力があるものの、新証言や新事実にあっさりと覆される。
でも、探偵はめげずに新しい推理を展開−−
だが、それも覆され…という、二転三転するプロットは本格ミステリの真骨頂だと思いました。
ミステリ好きなら、一番楽しめる部分ではないかと思います。
本作品は、斬新なトリックがあるわけでもなく、真相の部分もある程度ミステリを読んでいる方なら、「驚愕」まではしないでしょう。
でも、それは作品の質を貶めるものではなく、「丹念に練り上げた物語構成」に唸らされるはずです。
小説作りの巧みさに、「読ませていだたき光栄です」と言いたくなってしまう、傑作。
遅ればせながら読んでみました。
著者の作品に接するのは初めてでしたが、直木賞作家として記憶にとどめており、でも、受賞したのは、随分前だったよな−−と、プロフィールを調べてみると、1929年生まれ。
もう80歳を越えているのですね。
そんな歳を全く感じさせない、意欲作と言えます。
舞台は18世紀のロンドン。
解剖室で次々と発見される謎の死体−−という、猟奇的な内容で幕を開けます。
冒頭10数ページは、多くの人物が一度に登場してくるので、登場人物一覧を参照しながらになり、ちょっと読みづらいかもしれません。
でも、そこを乗り越えると、あとは著者の思うツボ。
死体を巡る捜査の章の合間に挟まれる、詩人を夢見て片田舎からロンドンに出てきた少年、ネイサン・カレンの運命の行く末に、惹き込まれていってしまいました。
本書が「本格ミステリ」としての本領を発揮するのは、物語も半ば、盲目の判事、ジョン・フィールディングの推理が展開していくところから。
深い洞察力をもとに導き出される仮説は、説得力があるものの、新証言や新事実にあっさりと覆される。
でも、探偵はめげずに新しい推理を展開−−
だが、それも覆され…という、二転三転するプロットは本格ミステリの真骨頂だと思いました。
ミステリ好きなら、一番楽しめる部分ではないかと思います。
本作品は、斬新なトリックがあるわけでもなく、真相の部分もある程度ミステリを読んでいる方なら、「驚愕」まではしないでしょう。
でも、それは作品の質を貶めるものではなく、「丹念に練り上げた物語構成」に唸らされるはずです。
小説作りの巧みさに、「読ませていだたき光栄です」と言いたくなってしまう、傑作。
アルモニカ・ディアボリカ (ミステリ・ワールド)
アルモニカーーかのベンジャミン・フランクリンが考案した、あえかな音を響かせるガラス製楽器。
その製作は困難を極め……脆く儚い。
ビッグネームも関わり、前作を凌ぐスケールと複雑さで重厚かつダークに展開。
登場人物がめっちゃ多く、前作の主だった人物は“名前だけ場面”も含め、ほぼ全員関わって来るため、
前作は必読。
.
廃坑道の深い闇の底から引き上げられた「天使」と見まがう遺体……
その胸には血でメッセージが書かれていた。
〔ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニア・ディアボリカ〕
盲目判事やアルたちが捜査に乗り出した途端、その天使の遺体はすり替えられ……
本物の遺体は別の場所に隠匿した形で発見される。
“胸に書かれた意味深なメッセージと、遺体のすりかえ”は、前作の事件と重なり、
呼応する。ハーモニー(アルモニカ)のごとく。
厳重に箝口令が敷かれた楽器:アルモニカ……
その楽器の周囲で、理不尽に引き裂かれ・想像を絶する辛酸を舐める羽目に陥った2組のカップル。
そして、前作:ネイサンの投獄体験よりも重く・辛く・屈辱的・理不尽で、絶望的な「精神病院」の内情。
そんな絶望的状況に幽閉され、堪え難い拷問を受けてもなお、魂の清廉さを保ち、
目の前の“か弱く美しい人”を愛し慈しみ、守り抜こうとした、楽器奏者と画家と小説家。
何の希望もない・地獄のような閉鎖空間で、彼らが音楽を奏で、皆が唱和する短い場面が、感動的☆☆。
懐かしい歌が、無気力な人々の心にいっとき明かりを灯したように……
暗闇の底で育ったナイジェルが
“理不尽と悪意が蔓延したこの世界に見た光”は、エドだったんだろう。
その製作は困難を極め……脆く儚い。
ビッグネームも関わり、前作を凌ぐスケールと複雑さで重厚かつダークに展開。
登場人物がめっちゃ多く、前作の主だった人物は“名前だけ場面”も含め、ほぼ全員関わって来るため、
前作は必読。
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廃坑道の深い闇の底から引き上げられた「天使」と見まがう遺体……
その胸には血でメッセージが書かれていた。
〔ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニア・ディアボリカ〕
盲目判事やアルたちが捜査に乗り出した途端、その天使の遺体はすり替えられ……
本物の遺体は別の場所に隠匿した形で発見される。
“胸に書かれた意味深なメッセージと、遺体のすりかえ”は、前作の事件と重なり、
呼応する。ハーモニー(アルモニカ)のごとく。
厳重に箝口令が敷かれた楽器:アルモニカ……
その楽器の周囲で、理不尽に引き裂かれ・想像を絶する辛酸を舐める羽目に陥った2組のカップル。
そして、前作:ネイサンの投獄体験よりも重く・辛く・屈辱的・理不尽で、絶望的な「精神病院」の内情。
そんな絶望的状況に幽閉され、堪え難い拷問を受けてもなお、魂の清廉さを保ち、
目の前の“か弱く美しい人”を愛し慈しみ、守り抜こうとした、楽器奏者と画家と小説家。
何の希望もない・地獄のような閉鎖空間で、彼らが音楽を奏で、皆が唱和する短い場面が、感動的☆☆。
懐かしい歌が、無気力な人々の心にいっとき明かりを灯したように……
暗闇の底で育ったナイジェルが
“理不尽と悪意が蔓延したこの世界に見た光”は、エドだったんだろう。