嘘つき鳥
9月28日の日経新聞の短評。まず目を止めることがないでしょう。でも、このタイトルはいきなり飛び込んできました。作家としてもテレビ番組のプロデュ-サとしても数多くの作品がある久世光彦「嘘つき鳥」。2006年に死んだ(「死んだ」という言葉こそふさわしいと言っているので)。それが今、生前に出版しなかったエッセイ(かどうか、なにしろ「嘘つき鳥」と自分で言っているのだから)で、かつて「印刷された原稿をゴミ箱に捨てた(久世朋子のあとがき)」原稿、を出版することになった。ひとつのエッセイ、いや作品は長くて数ペ-ジ。しかし、これだけの喚起力と深い哀愁に引き込む魔力をもった作品は珍しい。まるで中也の詩のようだ。
どれもたった数ペ-ジだけれど、すべての作品は密度が高く、単なるノスタルジ-と切り捨てるのではもったいない。でも、きょうは、久世朋子とともにもうひとつ掲載されている小泉今日子のあとがきを紹介してみたい。十六歳のときに「セリフは下手だけれど、いい眼をしてた」言って、久世が見つけだしたという。小泉今日子の不始末の時にも、まっさきに電話をくれて「オレはいつも愛しているからな」と励ましてくれたという。
「先生にはもちろん他の顔もたくさんあった。・・そして女の前でしか見せない嘘つきな男の顔。・・露地の女の元へ向かう姿を想像する。なんだかとても憎たらしくて思い切りとび蹴りを喰らわせたくなった。・・顔を伏せながら銀座の煙草屋(その女と関係していた)の前を早足で通り過ぎる卑屈な姿を想像してみる。女の敵だ!と叫びたくなった。・・ミルクの匂いの人妻と礼拝堂でキスする姿を想像する。生意気だぞ、この野郎。往復ピンタをお見舞いしたくなった。・・不良少女に「嘘つき」と言われた顔を想像してみる。いい気味だ!なんでこんなに腹立たしい気持ちになるのだろう、と考えると・・みんな私の中に存在しているからなのだと思う。私も一人の女なのだ。・・(大事なことに)本当に気づいていないのが男、・・男の嘘は(女と違って)嘘といいきれないところがあるから狡いなといつも思う。・・私ならあの赤い柄の果物ナイフでブスッと刺して」。名文としか言いようがない。
どれもたった数ペ-ジだけれど、すべての作品は密度が高く、単なるノスタルジ-と切り捨てるのではもったいない。でも、きょうは、久世朋子とともにもうひとつ掲載されている小泉今日子のあとがきを紹介してみたい。十六歳のときに「セリフは下手だけれど、いい眼をしてた」言って、久世が見つけだしたという。小泉今日子の不始末の時にも、まっさきに電話をくれて「オレはいつも愛しているからな」と励ましてくれたという。
「先生にはもちろん他の顔もたくさんあった。・・そして女の前でしか見せない嘘つきな男の顔。・・露地の女の元へ向かう姿を想像する。なんだかとても憎たらしくて思い切りとび蹴りを喰らわせたくなった。・・顔を伏せながら銀座の煙草屋(その女と関係していた)の前を早足で通り過ぎる卑屈な姿を想像してみる。女の敵だ!と叫びたくなった。・・ミルクの匂いの人妻と礼拝堂でキスする姿を想像する。生意気だぞ、この野郎。往復ピンタをお見舞いしたくなった。・・不良少女に「嘘つき」と言われた顔を想像してみる。いい気味だ!なんでこんなに腹立たしい気持ちになるのだろう、と考えると・・みんな私の中に存在しているからなのだと思う。私も一人の女なのだ。・・(大事なことに)本当に気づいていないのが男、・・男の嘘は(女と違って)嘘といいきれないところがあるから狡いなといつも思う。・・私ならあの赤い柄の果物ナイフでブスッと刺して」。名文としか言いようがない。
一九三四年冬―乱歩 (創元推理文庫)
乱歩を1冊も読んだ事がないにもかかわらず、勧められて読んでみた。
文句なくおもしろい!
読みながら映像化され、あとで映画を見たような錯覚に陥るタイプの小説。
戦前の麻布に建つこじんまりしたアールヌヴォー様式ホテルの描写、美青年ボーイや
可憐なアメリカ人人妻等、取り巻く面々も楽しいが、なんと言っても、スランプに
陥ってる主人公・乱歩がすばらしくキュート。
自分は血みどろの怪奇小説を書いてるくせに、人の鼻血を見ただけで気が遠くなる
ような頭の薄い40男。
ちなみに私の脳内映像では温水洋一氏が演じてくれた(笑)。
久世が乱歩になりきって書いた小説内小説「梔子姫」が大変妖しくエロティックなので、
後に実際の乱歩作品を読んでみたら、久世の贋作の方が艶かしさでは上だった。
他の乱歩作品や往年の海外ミステリー、当時の作家の名前もたくさん出てくるので、
それらに詳しい人が読めば、さらに楽しめるだろう。
文句なくおもしろい!
読みながら映像化され、あとで映画を見たような錯覚に陥るタイプの小説。
戦前の麻布に建つこじんまりしたアールヌヴォー様式ホテルの描写、美青年ボーイや
可憐なアメリカ人人妻等、取り巻く面々も楽しいが、なんと言っても、スランプに
陥ってる主人公・乱歩がすばらしくキュート。
自分は血みどろの怪奇小説を書いてるくせに、人の鼻血を見ただけで気が遠くなる
ような頭の薄い40男。
ちなみに私の脳内映像では温水洋一氏が演じてくれた(笑)。
久世が乱歩になりきって書いた小説内小説「梔子姫」が大変妖しくエロティックなので、
後に実際の乱歩作品を読んでみたら、久世の贋作の方が艶かしさでは上だった。
他の乱歩作品や往年の海外ミステリー、当時の作家の名前もたくさん出てくるので、
それらに詳しい人が読めば、さらに楽しめるだろう。
向田邦子X久世光彦スペシャルドラマ傑作選(昭和57年~昭和62年)BOX [DVD]
向田&久世の強力な顔合わせ、そして向田さんの男女の世界観を表現するのにピッタリの女優・田中裕子さんに出会う初期作品(6作品の内の2作品)が納められている。昭和初期の正月風景そして小林亜星さんの音楽と黒柳徹子さんのナレーションがドラマの骨格をさらにしっかりと固めている。
田中裕子さんの美しさが際立ってました。
田中裕子さんの美しさが際立ってました。
サヨナラ COLOR [レンタル落ち]
幸せな気持ちになれました。
ちょっと斜めな気持ちで見始めた自分に反省。
この主人公の役は、竹中直人さんにすごく合っていて、
ご自身のことをすごくよくわかってらっしゃるんだなあと
感銘を受けました。カッコつけたいけどカッコ悪い(失礼)。
そういうユーモアや哀愁がほどよい。
絵も大変美しくて、監督のこだわりが伺えます。
原田知世さんの空気感、永積さんの歌声もまた素敵でした。
説教くさくなく、さりげなく、恋っていいなって教えてくれる。
自分をときめかせてくれる人を大切に思う。ただそれだけ。
シンプルなものは美しい。
(原田さんを見習って!)
トゲトゲした自分をリセットしたくなりました。
ちょっと斜めな気持ちで見始めた自分に反省。
この主人公の役は、竹中直人さんにすごく合っていて、
ご自身のことをすごくよくわかってらっしゃるんだなあと
感銘を受けました。カッコつけたいけどカッコ悪い(失礼)。
そういうユーモアや哀愁がほどよい。
絵も大変美しくて、監督のこだわりが伺えます。
原田知世さんの空気感、永積さんの歌声もまた素敵でした。
説教くさくなく、さりげなく、恋っていいなって教えてくれる。
自分をときめかせてくれる人を大切に思う。ただそれだけ。
シンプルなものは美しい。
(原田さんを見習って!)
トゲトゲした自分をリセットしたくなりました。