モノレールねこ (文春文庫)
「ななつのこ」など、日常の謎をさわやかに書き綴っている印象のある加納朋子さんが、家族や生と死といった重くなりがちなテーマを盛り込んで書いた短編集。
表題作「モノレールねこ」は庭に現れたでぶっちょの野良猫を通じた奇妙な文通を描いた作品。ラストでサトルがタカキに仕掛ける行為が個人的には大好き。
「シンデレラのお城」は偽装結婚した相手の男性には、目には見えない婚約者がいたというお話。奇妙な同居生活をつづける中、彼女は自分が抱えていた傷に再度向き合っていく。ラストのちょっとしたどんでん返しが効果的。
どの作品も死に接したときの優しい視点が加納朋子さんらしいなぁ……と思ってしまいました。
てるてるあした (幻冬舎文庫)
夜逃げした女の子が行き着いた先は佐々良町。それまで両親から愛情を感じることが出来なかった少女が、佐々良の人々に出会い成長し温かさに触れる物語です。そして、物語の中に出て来る言葉は、キューンと突き刺さるものがあります。
「てるてるあしたきょうはないてもあしたはわらう」
ずっと心の何処かに覚えておきたい言葉となりました。
ななつのこ (創元推理文庫)
~ときにわたしたちは平凡な人生を嘆いたり、波瀾万丈を望んだりします。でもほんとうに、わたしたちの人生は平凡なのかしら。もしかしたら、目が開いていないだけなのかもしれません。この本の最大の魅力は、日常の出来事に目を開いて、感性というアンテナをはり巡らしてせっせと生きている主人公・駒子のココロの有り様にあるのではないかと思います。
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物語は典型的な安楽椅子探偵の形式を取っているものの、構成はこれまでに類を見ません。短編集の中に、別の短編集が入れ子状態になっているのです。そして、どちらの短編集にも安楽椅子探偵が登場します。ふたりの安楽椅子探偵が、それぞれの短編集の中で、謎を解いていきます。最後まで読み進めると、これはほんとうに短編集だったのかしら、と、そんなふう~~にも思います。
表紙の男の子と女の子。男の子は作中で明かされます。では女の子は? それはそれはすてきな謎が最後に残されたようで、読後はまた表紙を眺めてしまいました。~
少年少女飛行倶楽部 (文春文庫)
加納さんの新作、タイトルからして楽しみにしていました。
冒頭の部長・神の書いた飛行倶楽部の活動内容。
コレ、結構インパクトありました。
おつきあいで入ったクラブで海月が成長していく様も、もちろん面白いが、メンバー全員がちょっとずつ変わっていくのも良い。
自分勝手でマイペースだと思っていた樹絵里が、『二人組』をいつも怖がっていたことがわかったり、意地悪イライザが本当は海月が好きで、言っていいこと悪いことの区別がつかないだけだったり…。
障害者の姉を守るために、もう一人子供を産むことにした神の両親。
そのことに憤る海月。
海月の両親は、かつて『男の子が欲しかった?女の子が欲しかった?』と問うた時に『海月が欲しかった』と答えた。
それが当たり前と思って育った海月。
このエピソード、素敵だと思いました。
こんなふうに子育てしたいね。
初出が別冊文芸春秋の連載だった知り、ビックリ。
あとがきで、加納さんが『底抜けに明るい、青春物語が書きたくなりました。』と書かれていました。
もちろん大人にも読んで欲しいと思いますが、リアルタイムの中学生たちに是非ぜひ読んでもらいたい一冊でした。
底抜けに明るい気持ち良い作品でした。
てるてるあした DVD-BOX
以前、同枠で放送していたドラマ「雨夢」をこよなく愛していたので、「雨夢」のスタッフ&キャストが一同に再集結した本作にとても期待していました☆
実際、ドラマはそんな期待を遙かに凌駕するクオリティーで、毎回毎回、先が読めない展開にハラハラさせてくれました。
雨夢一座の顔、黒川智花ちゃんが今回演じる“照代”の暴言ぶり…前作の夢ちゃんとのギャップにビックリです!!
今作レギュラー以外にも雨夢一座の面々が意外な形で出演しているのにも注目してくださいね。
今作から一座の仲間入りをした“草笛光子さん”の品格と存在感(昔から大ファンです!!)、“福田麻由子ちゃん”の妖しくもキュートな魅力が共に際立っていました♪
とある、ひなびた田舎町で起こる“ほのぼの幻想ファンタジー”…主人公“照代”は様々な人達と出会い、不思議な事件に巻き込まれながらも一歩ずつ成長してゆきます。
照代の視点を通じて、見ている私たちに優しく何かを語りかけ、大切なものを思い出させてくれる…「てるてるあした。きょうはないても、あしたはわらう…」そっと心に響き渡るような優しい名作です♪
きっと何年経っても忘れられないんだろうなぁ…☆彡