スポーツマン金太郎〔完全版〕 第一章【上】 (マンガショップシリーズ 294)
ひとまず第一章の上中下3冊を買いました。
内容は確かに完全版のようで、以前発行されていた版(昭和30年代の集英社版、平成初め頃の草の根出版会版)がコマを一段分削除して辻褄を合わせていたこともわかりました。
しかし、造本、体裁面については残念な気がしました。
まず、刷り色はなぜ青やセピアでなくてはならないのでしょうか。(第二巻は墨というかグレーでしたが。)これは雑誌の感覚でしょう。
全ページに、同じ色のアミで外枠が入っているのも理解できません。
「正しい子供漫画」として、果たしてこれが正しいあり方でしょうか。何より、読みづらく目に悪い。
また、『スポーツマン金太郎』全9巻を買った人に特典として、先着で全巻収納できる『化粧箱』と『テラさんの1コマ漫画塾』という本を差し上げるとあります。
これは興味深いですが、応募するためには、各巻末の右下に刷り込まれている三角の応募券9枚を切り取ってハガキに貼らなければなりません。愛蔵版たるべき本のページを切り取らせるとは、どういう神経でしょうか。応募券は、せめて帯に刷り込んでおくべきではないでしょうか。
さらに、この景品は限定生産で、在庫がなくなり次第キャンペーンは終了といいます。せっかく切り取って送っても、貰えないかも知れないということです。全巻揃えた人には全員に渡すべきではないでしょうか。
内容が貴重なだけに、もっと読みやすく、読者の立場を考えた編集をしていただきたいと思います。
『スポーツマン金太郎』のみならず、全集を揃えようと思っていましたが、4冊目以降も迷っています。
関谷ひさしの『ストップ!にいちゃん』もこんな調子なのでしょうか。
漫画に愛を叫んだ男たち
この本では、高校時代の著者と赤塚不二夫との初めての出会いから、共に漫画家をめざした修行時代、人気爆発した赤塚のブレーンとしての多忙な年月を経て、2人の別れまでが描かれる。遠景に手塚治虫を、その手前にトキワ荘に集った若者たちを主とする漫画家たちを配して展開する、著者と赤塚と漫画との錯綜した愛の物語は、読ませる。
タイトル通り、主要登場人物はほとんど男で、漫画家というのは男女とも、それぞれホモ・ソーシャルな世界を作り上げてるんだなァ、と思った。ただ、それでは水野英子の立場はどうなるのかと、少々気にかかったが。
名声を得て交友関係を広げ、酒量も増え、タレント的な活動の比率を膨れ上がらせていく赤塚。昔からのスタッフが次々と去っていく中で、著者は赤塚の傍らに留まり続ける。しかし「手塚治虫の死、そして赤塚との訣別」と題された終章、その最後の最後で、別れは唐突にやってくる。漫画を愛し、漫画の堕落を呪詛しながら酒びたりの日々を送った恩人・寺田ヒロオの死。その死に触れながら、自分の酒への依存を力なく語り、ヨロヨロと製氷機に歩み寄ってまたチューハイを作りにかかる赤塚を目にして、著者はそのままスタジオから立ち去るのだ。この唐突であっけない別れは、痛切。
ところどころ、著者の言葉遣いの誤りは気になった。「同士」を一貫して「同志」と記したり、「そんな藤本の杞憂は見事に当たってしまったのである」(p152)のような雑な日本語は、著者の文章に微妙な底上げ感・水増し感を漂わせている。そこがもう一つ、この本を額面どおりに受け取れない理由でもある。
最後に、個人的には「この昭和四十六年は、藤子不二雄の『毛沢東』連載で始まった年だったが」(p195)という一節が強く印象に残った。インパクトあったんだろうな、少なくとも業界では。この藤子作品は「劇画 毛沢東伝」として現在復刊されている。