地獄のアリス 1 (愛蔵版コミックス)
作者お得意のガンアクションと廃墟、ディスコミュニケーションを題材とした作品です。
主要登場人物達のデフォルメが少々漫画的になり比較的ポップな内容ですが、一見荒々しいながらも達者なペンタッチは健在です。
荒野を一人で生きる腕利きの狙撃手である少年とパートナーの話はどこかカルト映画「少年と犬」を思い起こさせますが、主人公のシュウくんと行動を共にするメイド型人造人間のアリスは松本次郎作品中でも屈指の壊れ具合で、巻頭のエピソード以外では余り活躍致しません。
代わりに文明を残したコミューンの切れ者で唯一まともだが腹に一物有りそうな登場人物マキルダや短気な早撃ち美少女イライザと言った女性陣のキャラが立っています。
主人公の美少年シュウも遠距離の狙撃とその為の戦略こそ天才的ですが、漫画オタクで近接戦では役に立たず、他人とも距離を置かないと接する事が出来ない歪さが魅力です。
今後どうアリスが生かされるかが興味深いですが、何処を取っても松本次郎さんの作品としか言いようのない作品ですので、氏のファンの方には大いにお薦めです。
巻末にブラックなオマケ漫画「ガー助の不条理日記」が4編収められて居ます。
地獄のアリス 2 (愛蔵版コミックス)
世界最終戦争後のような世界。超一流の狙撃手だが、私生活は悲しいほど情けない主人公。すでに家族を失って久しく、マンガ・オタクで、近接戦で役立たず、幼少期から虐待され、生きるために人殺しもいとわず、友達はいない。そんな悲惨な生い立ちに悲壮感は微塵もなく、タフに見えながら、情緒不安定さはその辺の子供とかわらない。その歪みが魅力を醸し出している。