やくざ絶唱 [VHS]
勝新太郎がやくざを演じると、普通のやくざとちょっと違ったユーモア感が漂う。たとえば、『仁義なき戦い』の菅原文太のようなカミソリのような雰囲気でない。といって危なげないかというととんでもなく、まるで火の玉みたいにあたりに危険をまき散らして血の雨を降らせる勢いなのだ。そんな男が妹という弱点を持っている。大谷直子だ。成績優秀な高校生の大谷は、清純さ初々しさをまといながら、体当たりの濡れ場に突入していく。このあたりの思い切りのよさは、兄貴ゆずりか。大谷が身を任せるのが、川津祐介と田村正和と二枚目ぞろいだ。激しい濡れ場に挑んでいるけど、どうもヌードシーンは吹き替えっぽい。冒頭から画面の前後を180度切り替えるカット割りが多いが、ヌードの吹き替えとベッドシーンのカット割りを不自然無く見せるのに役立っている。もっとも見所はそこだけでなく、大暴れの勝がスナックでライバルの組の若い連中と立ち回るところ、それとラストの哀愁漂う銃撃戦ともろもろある。複雑な家庭事情に育った兄と妹のどろどろの愛憎劇で、いかにも増村的主題なのだが、生じきってドラマの中で人間関係がしっくり描けたかといえば『赤い天使』を目撃した目からすると、失敗作の部類かと感じる次第だ。たぶん勝新の持ち味が増村的なものとかみ合いきれなかったのだろう。三島を起用した『からっかぜ野郎』のような実験作といってもよいかもしれない
第17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け HDリマスター版 [DVD]
宇野重吉親子が見られたり
大滝秀治が若い頃から大滝秀治だったり
太地喜和子が若くて細くて瀬戸朝香をもっと色っぽくした感じだったり・・・。
黄門様をやる前の佐野浅夫はやっぱり悪役だったり・・・。
あんな日本の風景ってもうないのかもしれないけれど
テレビで くだらない韓国ドラマやるなら
寅さんや時代劇やればいいのに・・。
太地喜和子伝説
太地喜和子の恋人、太地喜和子と親交が深かった芸術家、俳優、監督etcが、いかに彼女の魅力に惹かれ、また彼女を愛していたかがわかるエピソードや証言が続く。
第三者形式で綴られた本書は、小説風でもある。
まず、太地喜和子の華麗な男性遍歴に圧倒された。
舞台、映画での脱ぎっぷりの良さと大胆さ、豪快な度胸に天性の女優魂を見た。
また酒豪であり、素顔はあっけらかんとして、性にあけっぴろげ、可愛くて魅力的な女性だったようだ。
巻末に参考文献が多く載っているが、そこから引用された、妻帯者だった三国連太郎との愛欲の日々が壮絶。
一人の女として女優として、エロスの源が育まれたようなエピソードが物凄い。
その他のエピソードも、太地喜和子と関わった人物が、一女優として惚れて、一人の女としても愛おしくなってしまうほどの、いい女っぷりが、読み手のこちら側にも充分伝わってきた。
共演男優との下ネタ連発の会話やエピソードには、読んでいてタジタジになってしまったほど。
亡きがらの顔が非常に美しかったそうだが、「いい時に亡くなった」「太地喜和子の齢を重ねた顔を見たくない」と関係者が口をそろえて言ったという。
一番美しくて仕事に脂がのっていた時に潔く、桜の花が散るがごとくこの世を去った、不世出の女優・太地喜和子。
艶やかな一人の女が燃え尽きるまでの数々の伝説に魅了されてしまった。
本書には出演した作品の写真が掲載されていない点が惜しい。
また、太地喜和子の人物像を語る上でどうしても欠かせなかったのだと思うのだが、下世話な色話と下ネタ話が多すぎて気になった。
その話の出どころが参考文献のどこからなのか、誰の証言によるものかがわからない等の理由で★3
新座頭市物語 折れた杖 [DVD]
一部のうるさがたが絶賛する、勝さん自身の
監督作です。
なにしろ、あの根本敬さんがほめるほどですから、
レベルの高さは、ある程度想像がつくかと
思います。
説明を一切はぶいて、スト−リーと映像のみで
語ろうとする部分が、勝さんの美意識と
完全に合致していて、
いつもと変わらないお話のはずなのに、
まったく別物の映画を観たような
気分にさせます。
入り込めない方は、冒頭のシーンでもう、
ダメでしょう。
この頃は言葉少ない映画はたくさんありました。
その中でも、群を抜いていて、しかも
ちゃんと娯楽作品として完成している
珍しい作品だと思うのです。
まだ幼い吉沢京子さんが愛らしい!!
勝さんの異能っぷりが、
存分に発揮されてます!!
あの頃映画 松竹DVDコレクション 「狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒涛篇」
豪華な出演陣による大作。
高橋英樹、緒形拳、近藤正臣、西郷輝彦、田村高廣らが
夫々見せ場を演じて見応え充分。
剣の流派が違うから殺陣も工夫されていて面白い。
ただ、映画の中の時間が長い。
幕末から明治の西南戦争まで。
どのエピソードをとっても一本の映画を作れる。
せめて風雲篇・激情篇・怒濤篇を3本のシリーズとして観たかった。
と、1974年の製作なのに無茶を言っていることは十分承知していますが・・・・。