排蘆小船・石上私淑言――宣長「物のあはれ」歌論 (岩波文庫)
吉川幸次郎が偉大な日本人と読んだ宣長。古来、多くの思想家が哲学を学ぶべきことを説いたが、哲学的人間であるためにはまず文学的人間である必要があると宣長は説いた。「もののあはれを感じる」という状態から、「もののあはれを知る」という段階へ。詩的な直観という情的な認識でとらえた対象の真から出発するということ。概念による分析的な思考から入ると「あげつらひ」に陥るということ。
この本に収められているのは宣長の歌学論である。詠歌の営みは人間にとって本質的なことだと宣長は説く。古典評論としても文体的に読みやすい。「うひ山ふみ」の次に読んでみてほしい。