古都 [DVD]
物語は、原作とほぼ同じです。成島東一郎による撮影が、綺麗な京の街を見事に映像化しています。公開年度が1963年。当時だからこそ“古都”の雰囲気が出せたのでしょう。京の街の景観は、80から90年代に見事に損なわれてしまいました。主演の岩下志麻は、上品でとても綺麗。作品世界に見事にマッチしています。「捨て子の方が、恵まれた人生を歩む」人生の皮肉な巡り合わせ。武満徹による音楽が、暗い影を落している作品世界の雰囲気を醸成しています。
なお、特典映像(シネマ紀行)として作品の舞台となった京の街を、女優森口瑤子が尋ねるというものがあります。撮影秘話を舞台となった呉服屋、料理屋などの主人にインタービューを交えて語られます。しかし、作り手の製作秘話がありません。せめて岩下志麻のインタビューぐらいは収録して欲しかったです。
雪国 (新潮文庫 (か-1-1))
およそ10年ぶりに再読しました。
そしてこれほどまでに「エロい」作品だったのかと改めて気づかされました。
直接の性的な描写はありませんが、互いを疎ましく思いながらも離れずにいられない、
端的で硬質な表現の端々に二人の熱情を感じます。
そうでいながら昼の光の下で醒めて見えるのもまた、事実。
何となく知らない町を歩いてしまったり、鉄瓶の響きに別れの足音を感じてしまったり。
決して恋の盲目になっていないところも別の意味で「エロい」なあと思いました。
この魅力を決定つけているのが作者の描写力なのは言うまでもありません。
描写ひとつひとつが美しい。
また、最後の火事のシーンの描写も壮絶!
女体美と自然美二つの美に追いやられようとする中で、ブツリと物語が途切れます。
ここまで淡々と描かれていた主人公の感情がここで一気に加速し別の形に変容するのですが
それ以降は語らないという冷たさがこの小説の真髄なのかなとも思います。
教科書などで部分的に読むのは意味がありません。
美しい日本語とは何かを語り継ぐためにも読み続けてほしい作品です。
ということで★5つ
山の音 [DVD]
昭和29年(1954)作品、白黒映画、ゴジラ第1作・七人の侍と同じ年の東宝映画である、
主人公夫婦に山村聰・長岡輝子、兄弟に上原謙・中北千栄子、上原の嫁に原節子、この配役でときめく人には必見のメロ・ドラマです、当時の邦画で評価が高く現在もなんとか見ることにできる作品におけるキャスティングの見事さには本当に目を見張らされます、不思議なもので同世代の山村・上原が見事に親子に見えます、
特に山村のたんたんとしながらも重厚さを失わない存在感は見事なもので「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランドに伍していると評価しても過大ではないでしょう、
評者がもっとも驚かされるのが、中絶を決意した朝、台所で鼻血をだす原節子、成人女性が殴られたわけでもないのに鼻血を出す映画はほかに「エイリアン1」のシガニー・ウィーバーだけでしょう、物語の基幹に流れるエロチシズムがこの場面だけ表面に現れた印象を受けます、原作が川端康成、実は川端が「伊豆の踊り子」の印象とは遠いかなり危険な作家だったことも事実です、物語がどんどん都合よく進むことの多い成瀬作品ですが、原作小説がとても緻密に構成されたものなので脚色も破綻のない仕上がりとなっています、
仕事はきちんとこなしながらも嫁がうぶで性的魅力に欠けるからと女遊びを繰り返す道楽息子役の上原の悪役ぶりも良し、原のうぶさを強調するために愛人関連の女優の色気が強調されているのも成瀬作品らしい分かりやさ、
小津映画の高橋とよのポジションが成瀬映画では中北の役目、二人のキャラクターはだいぶ違うがどちらも、あー、いるいる、と現在でも誰もが納得してしまう日本女性の王道のキャラクターです、
ラスト・シーンの東京と現在の東京を比べればこれが50年の時間の経過なのかと別な感慨もわく逸品です、
雪国 [VHS]
台詞が原作に非常に忠実に取り上げられている。島村の印象が薄いのも、作者の意図するところをうまく反映していたと思う。葉子の美しい声、駒子の一途さ、あだっぽさも原作か想像できるとおりである。火事の場面が、原作と少し違って、二人の恋の行方を象徴するかのような天の川が見たかった。
伊豆の踊り子、他 (英文版) ― The Izu Dancer (タトルクラシックス )
The narrator of the story is a nineteen-year-old student traveling alone through the Izu Peninsula. When he is climbing toward Amagi Pass, he meets a troupe of itinerant performers and gets attracted to the young dancer who plays the drum. He wonders if she will spend the night in his room, but when he happens to see her run out naked into the sun at the outdoor public bath, he realizes that she is a mere child -- too young for lovemaking. Feeling as though a layer of dust has been cleared from his head, he happily accompanies the troupe to Shimoda, where he says good-by to the little dancer and takes a ship to go back to Tokyo. Aboard the ship, he silently weeps, but quite unashamed of his tears. Full of romanticism, this is perhaps Nobel laureate Kawabata’s most popular novella.