ショート・カッツ [DVD]
この監督の作品は『ナッシュビル』以降、同時代でほぼ全作品をずっと見てきた(といってもそれ以降、本邦ではほとんど劇場未公開に終わる作品が多かったが)。本作は恵比寿ガーデンシネマのロードショーでちゃんと見た。本DVDも遙か昔に購入済み。
ところが、である、このDVDはまだ一度も見ていない。劇場でのインパクトは相当なものだったが、この映画を繰り返し見よう、とはどうしても思えないのだ。
つまらないのか、というとそうでは決してない。ただ、楽しんで映画を見よう、という態度は徹底的に拒否される種類の映画なのである。このレビューも『そんな彼なら捨てちゃえば?』のブルーレイディスクのレビューで本作との関連を書かせていただいたいきがかり上、なかば義務で書いているのだが、どこが面白かったのかと思いだそうとしても苦しむばかりである。
ラストの衝撃は明かせないが、それまで複数の登場人物たちが紡ぎ出していた日常社会がガラガラとはかなく崩れ去るさまを、ある一人の人間(この奥さん役をやっているジェニファー・ジェイソン・リーは本当にうまい女優さんなのに、最近、活躍が少なくてもったいない)の精神の弱さに凝縮させて描いており、これが本当にホラー映画よりも数倍怖いデザスター場面になっているから、見る人は覚悟が必要だ。
監督な亡くなるまで社会に対するシニカルな視点を失わなかった。一本筋の通った本当の大巨匠だったな。