人魚鬼―若さま侍捕物手帖 (徳間文庫)
篠山藩主の息女うつぼ姫。若さまをして「あの女に惚れなければ男じゃねえよ」とまで言わしめた稀世の美女。藩主の信任厚い医師江川了巴は、不老長寿の秘法を求め、姫を人魚のすむという南海の孤島に連れてゆく計画をたて、道中警護のため、剣客小森新太郎を雇います。
本編は、捕物帖というより伝奇ロマンと言ってよいでしょう。姫のあまりの美しさに魅入られた男どもが、姫をわが物にしようと、あの手この手の策略を弄します。物語は、剣はめっぽう強いが世事にはうとい新太郎を中心に展開しますが、要所要所で若さまがどこからともなくあらわれ、姫の危難を救います。姫はいつしか若さまに恋心をいだきますが、若さまは、「君子危うきに近寄らず」とばかりに素知らぬ顔。とんだ野暮天ですが、若さまはおいと坊のお酌でちびりちびりきこしめしてるほうが性に合うと見えます。
よくわかる国宝 国宝でたどる日本文化史 (楽学ブックス―文学歴史)
基本的に見開き2ページで1つの国宝を素晴らしい写真とともに紹介しています。国宝ばかりですから、眺めているだけで美術鑑賞になっています。ただ誌面の関係でしょうか、国宝第1号となった広隆寺の弥勒菩薩や法隆寺の玉虫厨子など、写真入りで紹介してほしかったものもありました。
本書の内容です。
国宝鑑賞への招待、これだけは知っておきたい国宝鑑賞用語、都道府県別国宝の数は?、見ておきたい国宝はここにある
縄文・弥生・古墳時代 日本文化の黎明期、縄文のビーナス(尖石縄文考古館)、縄文雪炎 火焔型土器(十日町市博物館)、これも見ておきたい! 縄文、弥生、古墳時代の国宝
飛鳥時代 仏教に国造りのベースを求めた、高松塚古墳壁画女子群像(高松塚古墳)、丙子椒林剣/七星剣(四天王寺)、菩薩半跏像(中宮寺)、百済観音(法隆寺)、救世観音(法隆寺)、釈迦三尊像(法隆寺)、金堂(法隆寺)、五重塔(法隆寺)
奈良時代 仏教が国家権力の象徴となった、阿修羅像(興福寺)、盧舎那仏坐像(東大寺)、正倉院(正倉院)、薬師三尊像(薬師寺)、鑑真和上坐像(唐招提寺)、十二神将立像(新薬師寺)
平安時代 権謀術数と怨霊が闊歩した、薬師如来立像(神護寺)、中尊寺金色堂(中尊寺)、弥勒仏坐像(慈尊院)、十一面観音立像(法華寺)、醍醐寺五重塔(醍醐寺)、釈迦如来立像(清凉寺)、平等院鳳凰堂(平等院)、阿弥陀如来坐像(平等院)、雲中供養菩薩像(平等院)、平家納経(厳島神社)、三十六人家集(西本願寺)、源氏物語絵巻(五島美術館)、伴大納言絵詞(出光美術館) 鎌倉時代以下は字数の関係で省略します。
若さま侍―時代小説英雄列伝 (中公文庫)
本書は、「舞扇の謎」、「首くくり指南」、「天守閣の狸」など、われらが若さまの活躍する短編5編と中編「べらんめえ十万石」が収められています。「舞扇の謎」は若さまが(颯爽とではなく)うつらうつらしながらお目見えする記念すべき作品。せっかくの居眠りを邪魔された若さまが部屋に踏み込んだ田舎侍どもを一喝するところが実にかっこいい。おっとりしているのに、凛とした気品がただよいます。
「べらんめえ十万石」の主人公は若さまではなく、若さまの原型とでもいうべき侍です。水茶屋の女将おれん姐さんは二人組の侍に追われますが、危ういところを浪人体の侍に助けられます。この男、侍のくせにひどく伝法な口の利き方をしますが、非常に育ちのよい気品がある。それに酒好き。おれんの部屋に勝手に上がりこみ、酒の相手を所望するなぞ、若さまそっくり。天衣無縫な主役の活躍する作品は、読後感がさわやかです。