蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)
このストーリーは好きですよ。現在、恋愛はある型にはまったものではなくなっています。ましてや親の承諾が必要だとか、婚前交渉はタブーなどという考え方はとうの昔になくなってしまっています。現在の恋が乱れているとは思いませんが、何でも構わない(不倫や二股など)という風潮があるとも思います。そのような中、明治時代における厳しい父性制度(適当な表現かどうかわかりませんが…)において自由な恋愛ができない中で、主人公の弟子の女に対する恋心や煩悶、疑念、女の恋人への嫉妬などの心情を赤裸々にも表現されていると思います。話の内容は古いですが読んでみる価値はあると思います。最後のシーンはあまりに有名で滑稽ですね。昔と今の恋愛の違いというのを感じられるかもしれません。
恋する日曜日 文學の唄 ラブストーリーコレクション [DVD]
恋する日曜日シリーズでは今までコミックが原作の作品はありましたが、本格的な文学作品を映像化したのはこのシリーズが初めてです。そして、ただ映像化するだけでなく現在に置き換えてアレンジしてあります。そのためか原作の主題を映像化するのに重きを置き、原作とはかけ離れた表現の作品になっているのが多いです。
ただ作品のチョイスは考えられていて、武田麟太郎 佐左木俊郎 林芙美子など玄人好みの、まず商業ベースではドラマ化されないだろうという作品ばかりです。また出演者も粟田麗 橘実里 千葉哲也 他、書ききれないほどの本当の実力派をそろえていて、見ている人をその作品世界にぐいぐい引き込んでいきます。
内容は地味な作品が多いので手をたたいて笑えるような作品はありませんが、じっくりと文学の世界に浸りたいときには最適の作品で、優れた短編集を呼んでいるような錯覚に陥ります。とてもお勧めできるDVDです。
田舎教師 (新潮文庫)
この作品に「中学」という言葉が出て参りますが、勿論これは現代の中学校ではありません。明治期の中学は、本当に恵まれた裕福な家庭の子息しか行けないような、学費も高いものでした。そのため、家庭の事情で中学ですら中退せざるを得なかった学生というものは、その3割にものぼったと言います。また、肺病も多く、そして死の病であった時代でした。このお話は中学を卒業するところから始まります。様々なレビューがあるように、人によって見る場所が全く異なるような作品です。