帰れないヨッパライたちへ―生きるための深層心理学 (NHK出版新書 384)
きたやまさんの本は、初期のエッセイから、かれこれ15冊くらい読んできましたが中抜けも多いので、今回の本がどんな位置づけになるのかは正確には分かりません。ただ、全体をまとめる上で「嫉妬」というキーワードに比重が、以前よりくっきりとかかっているのかと思いました。
私の他者への嫉妬、その裏返しとしての羞恥、恐怖。それをうまく腹におさめつつ、人は成長していく。そのバランスがうまく取れずに、困難に直面したときに、私という秘密を受けとめて、他者にばらさずに抱えてくれる母的な存在である第二者を、実際の母親が引き受けられない場合に浮かび上がる、精神分析医などの職業的第二者の必要性。
また、今まで、嫉妬に弱くこもりがちであった日本人の、若い世代に見られる嫉妬への強さへの着目。
もう若くはありませんが、自分の心を整理して見つめるきっかけにもなる本でした。
有終の美 in Tokyo
きたやまさんのトークや、観客の拍手をほとんどカットしてあります。
曲の大半は加藤和彦作品です。
やはり加藤さんを思い出しますね。
加藤さんを想って作られた3曲目の「早く逝こうとする君」や、新しい歌詞も加わった12曲目の「イムジン河」は、歌詞を確認したかったです。
歌詞カードがついてない点で☆1つ減らしました。
戦争を知らない子供たち-北山修 作詩集(紙ジャケット仕様)
稀代のボーカル、杉田ジローさんの輝きを思いだします。
シューベルツでその力量を発揮し、その後フォークの
存在を万人に知らしめた金字塔をジローズで建立するのは
いうまでもありません。
岡林さんの率いる怒涛のURC的潮流と、北山一家の
青春東芝フォーク、まったく甲乙つける対象では
ありませんが、フォークを万人のものにした功績は
北山さんにあることは言うまでもありません。
その後、ビジネスの場として参入してきた大手レーベル
によって築かれた「フォークソング」。
その中にも北山さん作品を思わせる情感の富む
ものもありますが、ここはやはり区別していきたいものです。
最後の授業――心をみる人たちへ
北山さんの著作は中抜けもあるが、ずっと親しんできた。『戦争を知らない子供たち』『人形遊び』『人形は語らない』『悲劇の発生論』などなど。この本はそんな北山さんの精神医学の集大成。講義の現場にテレビカメラが入っていることを暴露しながら、メディアとコミュニケーションをめぐって語る。大切とされるのは医師と患者のパーソナル・コミュニケーション。そして実は歌もマスコミに乗る以前には、贈る人から贈られる人へのパーソナルな感情表現だったのではないか(そのことがあまりにも忘れられている)。また言葉は何かを明らかにするものであると同時に心の中に影の部分を作る、そのことに意識的であること、などなど、やわらかい語り口で届けられる真摯なメッセージ。
日本人、日本語に関する文化論的な切り込みも興味深い。
心をしばってくる社会、時代に抗するために、北山さんのメッセージをどう消化して受け止めていくか。何度か読み直してみたい。