朽ちていった命―被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)
今回の地震の甚大な被害のなかでも、とりわけ今後に大きな課題を残しそうな福島第一原発での事故ですが、連日の報道を見ながらふと本書のことを思い出し、読みました。個人情報云々が叫ばれる昨今、たとえ遺族の理解や了解を得られたとしても、写真も含めて本書のような記録がどこまで可能か、そういうことも考えてしまいました。たとえば、ふだん新聞で当たり前のように目にする「Sv(シーベルト)」という記号が、結果的に人を死に至らしめることを理解してはいても、その過程においてどのような影響を人体に与えるのか、そういったある意味、曖昧な部分を淡々と綴る記述には、他に類を見ない衝撃がありました。