子供の名前が危ない (ベスト新書)
楽しみながら読めて、しかも今自分が生きている世の中なり或いは自分自身なりについて考えさせてくれる材料を提供してくれるという意味では、本書はまさしく良書だと思います。
冒頭「あなたはこの名前が読めますか?」という全20問「クイズ」が掲載されていますが、
大まかには、笑いを齎すような様々な珍奇ネームの紹介、それを命名された子供が負うことになるハンディキャップ、珍奇ネームを着想する親の深層心理、それに関わる今日の世相、という流れで纏められています。
広い意味では著者自身の名前が、珍奇ネームに該当するらしいという事情がどこまで関与しているのか定かではありませんが、奇抜な名づけは我々人間が抱える欠損感覚の代償行為として捉えられるのではないか、そして日本社会に蔓延した無力感がそれを煽っているのではないか、という著者の議論には説得力が感じられました。
個人的には、最後の方の、「先回り社会」のお話や、正しい命名法のお話は、やや蛇足で玉に瑕のようにも感じられましたが、減点の対象になる程のものではないと思います。