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泣き虫弱虫諸葛孔明〈第2部〉 (文春文庫)
否、本当に待ちに待ちました! 今まで何種類かの『三国志』を読んでいますが…、何という『三国志』!正に抱腹絶倒。悪キャラの諸葛孔明がたまらなく魅力的です。私は『三国志』中最も好きな人物が孔明なのですが、この孔明も違った意味で魅力的。まるでいたずらっ子そのもの。思わず酒見賢一さんの頭の中を覗いてみたくなりました。こんな面白い作品を書かれる作家の頭とは如何なる宇宙を潜ませているのか?様々な方がそれぞれの群像劇を描かれていて、それぞれに楽しく拝見させて頂いていましたが、未だかつてコレほど面白い内容はなかったかも…?中国の史実は正に勝者が歴史を作るという言葉通りの如くですが、そんな史実など正直クソくらえ(下品な言葉を使ってしまった…ゴメンナサイ?)と思わせてしまう面白さです。内容の分析のせいか、一場が長いのでまだ孔明の本格的な活躍にはほど遠いのですが、いっそ何時までもこの小説を楽しみたいのでどんどんちんたらと解説を(ツッコミか?)増やして長く続けて頂きたいとすら思ってしまいます。五丈原の孔明の活躍ぶりが今から楽しみです!「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の場面はどんな策略になるのか?!今までの史実がどのようなパラレルワールドとなるのか?胸がワクワクしてしまいます。 酒見賢一さん、出来るだけ早く読ませて下さいね!我が儘なお願いなのは十分承知なのですが…?よろしくお願いします!
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孔子伝 (中公文庫BIBLIO)
白川静の本を読むのは初めてだったがこの本は当たりだった。
孔子についてのさまざまな斬新な見解が述べられている
(孔子は巫女の私生児だったとか、荘子がむしろ孔子の思想をもっともよく継承しているとか)。そしてそれが却って面白かった。
いろいろな資料に基づいてそう語るので説得力があって、謎解きをしているようで楽しい。
中国古典だけでなく漢字や古代文化についての該博な知識、それだけでなく、もっと人間的な体験の深さに裏打ちされた文体には独特の味わい深さがある。
あと孔子だけでなく、墨子や孟子、老荘思想のバックグラウンド、当時の社会情勢などについてもページを割いて色々考察しているので楽しい。
孔子というより白川静という個性の方がより身近に感じられる。
名著だと思います。
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雲のように風のように [DVD]
「三食昼寝付き」という響きにつられ、新皇帝のお妃候補に出た、元気だけが取り柄の少女「銀河」。
自分の事だけで精一杯だった少女は、城で出会った人達によって、大きく成長していきます。また、好奇心旺盛で真っ直ぐな性格の銀河に、出会った人たちも動かされていきます。
とぼけた雰囲気を持ちながら、みた後少し切ない、そして続きが見たくなる話です。
銀河役 佐野量子さんが歌うエンディングもおすすめですよ。
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後宮小説 (新潮文庫)
素乾(そかん)という国の歴史書、いわゆる正史として伝えられている記録を
もとに、筆者が正史の裏で実際に起きていたことを推測し、時に空想の翼を
自由に羽ばたかせて憶測を加え、書き記したのが本書である(という設定に
なっています)。
歴史上の出来事が簡潔に、ともすればぶっきらぼうな調子で記されている
素乾国・正史の文献に対して、「……と記されてはいるが、実際はどうだった
であろうか」「……とまで馬鹿正直に記載している。そんな史官の執筆態度に
好感を覚えてならない」などと感想を差し挟みながら、筆者が書き記していく。
正史ったってかなりいいから加減なもんじゃないかね? ならばこっちも
ちょいとね、大風呂敷を広げさせてもらいますさかい。そんな調子で、
筆者自らが楽しんで書いていってる姿を彷彿とさせる話の雰囲気、
それがとても楽しい。あちこちで、くすりとしながら読んでいきました。
素乾国の後宮を舞台にして、銀河という名の少女が活躍する物語。
誰に対しても物怖じすることなく、好奇心の赴くままに行動していく銀河。
彼女の溌剌として屈託のない言動が、友を呼び、人を動かし、やがて銀河伝説
といわれる歴史を産むことになります。物語の主人公・銀河のキャラもよかった
けれど、準主役にもキラリと光る人間がいました。なかでも、後宮「女学校」の
部屋で同宿者となった江葉と、傍若無人の漢(おとこ)・混沌のキャラが
印象に残ります。
後宮の学校の授業で房中術などが講義されますが、それがちっとも卑猥では
ありません。むしろ、爽快ですらありました。講師の角(カク)先生と銀河、
江葉との問答など、哲学的な色合いすら帯びていて、理屈抜きに面白かったな。
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泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部
三国志の山場「赤壁の戦い」。しかし、酒見三国志は一味違います。
正史なら周瑜の大活躍!!空気の劉備軍。演技なら孔明の大活躍!!いいとこどりな劉備軍。酒見史なら孔明はツンデレ!!殺人鬼の集団、劉備軍。
孔明が痴力を振り絞り、周瑜と渡り合うのですが、ここが困ったことに、周瑜の評価がかなりまっとうなのに、孔明に対してだけ感情的になってしまう。これはまるで、クレヨンシンちゃんのしんのすけとカザマくんの関係のようで、好きものには堪らない。
しかし、孔明の活躍ばかりで、曹操陣営も、劉備陣営でさて影が薄い。張飛が大殺戮してもぱっとしないのはどうかと…。