恋の夜鳴きうぐいす~クープラン:クラヴサン名曲集
ロシニョール(仏)、ナイチンゲール(英)、ナハティガル(独)の名で知られる鳥が標題作の鳥であって、
ストラヴィンスキーの『うぐいすの歌』も実際はこの鳥を謳ったものです。
さて、自分はクラヴサンという楽器には親しんでおらず、クープランのその楽曲集にもごく最近まで触れていなかったのですが、
この演奏を聴いて煌びやかな演奏に陶然とし、さっそく購入するに至りました。
確かに別盤と聴き比べてみれば、ボーモン盤は大人しい印象を受けるのも無理からぬところですが、
彼自身クラヴサン曲の全集録音を為していることもあり、演奏にあたって自分なりの解釈をもって臨んでいることが理解されます。
一音いちおんを取り出してもボーモンのクープランには鮮烈さがあり、それは決して語るに足らぬものではなく、
バロックの真髄を極める演奏にはなっていると自分は聴きました。
バロックピアノ曲集 (世界音楽全集ピアノ篇)
リュリから5曲、ダカンから3曲(つばめ、かっこうを含む)クープランから20曲、ラモーから15曲収録されていて、有名曲はほぼ網羅されていますので、フランスバロックを勉強しようと思う初心者から上級者まで使えます。(ちなみに収録されている4人ともフランスの作曲家です)
問題の装飾音ですが、DOVER社から出ているクープラン2冊、ラモー1冊の本と比べると格段に丁寧に表記されているのがよく分かります。細かい音符で具体的にどう弾けばいいのか書いてありますので譜読みしやすいです。(もっともDOVER社から出ている本は全曲網羅しているのでそれはそれで価値がありますが)注釈も多数ついていますので、安心です。
クープランでは有名曲をほぼ網羅(ティクトクショック、修道女モニク、蝶々、シテール島の鐘、葦、百合の花開く、神秘的なバリケード、恋のうぐいす) ラモーでも有名曲をほぼ網羅(やさしい訴え、タンブーラン、ソローニュのお人好し、独眼巨人、めんどり、ガヴォットの主題と6つの変奏、エジプトの女)しているので有用です。
欲を言えば、クープランでもっとも長い曲といわれている「ドミノ(主題と変奏)」と、リュリ「ロンド風ガボット」が収録されていない事くらいです(後者はシフラのバロック曲集CDに収められている曲で、音楽の友社のバロック曲集には収録されています)
この本一冊持っていれば、だいたい用件は足りると思います。もし、もっとクープランやラモーを勉強したい人はDOVER社の楽譜を買いましょう(全曲収録されてます)
楽器の世界コレクション1 - ブランシェのチェンバロ - 18世紀ヴェルサイユ・クラヴサン音楽の美の世界 浜松市楽器博物館所蔵の名器“ブランシェ”による [DVD]
ヨーロッパの多くの楽器博物館が所蔵している名器と言われるもののなかでも、実際の演奏に役立つ楽器はそれほど多くない。特にチェンバロは構造が複雑かつデリケートで、共鳴体の器自体が最も重要な弦楽器などと違って、専門家による頻繁なメンテナンスが欠かせないために、ともすると博物館を飾る単なる調度品に成り下がっている場合が殆んどだ。こうした楽器の往時の響きをイメージするのは甚だ困難だが、今回浜松市楽器博物館の館長の英断によって行われた完璧とも言える修復作業の結果がこのレクチャー・コンサートに結実している。DVDとしては35分程度の短いものだが、収録内容は価値が高くまた充実している。
パリのアトリエ、ブランシェ工房によって1765年に製作されたこのチェンバロが、実際の演奏に使用できるまでの修復期間は実に10年に及んでいる。勿論撥弦部分のインストールだけでなく、音響板や台座の装飾も含めての大修復だったようだが、こうして歴史的な名器が蘇生した。ピッチは修復に携わった人や演奏家の中野氏自身の長い期間の試行錯誤の結果a=400、いわゆるヴェルサイユ・ピッチに落ち着いたようだ。この低いピッチによって音色に特有の典雅な雰囲気が醸し出されている。また調律も平均律ではないので、スケールを聴いていると平均律を聴き慣れた私達の耳には意外な感じを与えるが、それによって得られる和声の響きは非常に美しい。
このライヴ・コンサートで演奏されている曲目は当時の楽器の機能を最大限に活かした、純粋にチェンバロで再現することを前提に書かれたフランス・バロック、ロココの作品で、中野氏の優れた演奏によってこれらの曲が持っている魅力が余すところ無く引き出されている。それは様々なタイプの装飾音に満たされたひたすら華美な音楽だが、ある意味では刹那的で、当時の宮廷生活の虚飾や倦怠さえも髣髴とさせる興味深いものだ。
クープラン:王宮のコンセール集
ブリュッヘン、クイケン兄弟、レオンハルト… 今となっては共演を望むのも難しくなってしまった感のある巨匠たちが、1960~1970年代に掛けてレコーディングしたセオン・シリーズは本当にすばらしいと思います。このクープランも期待を裏切ることなく素敵な音楽を奏でてくれました。時には合奏で、時にはデュオで。室内楽が好きな方なら飽きることなく繰り返し掛けつづけてしまうのではないでしょうか。当時盛んに行われていた王宮での演奏が極上の演奏によって蘇るようです。