涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)
娯楽作品として素直に読み通せました。
楽しかったです。
批判している方には、キャラに感情移入できない…とか、作者の国語力が…とか、賞を受賞した作品のわりには…とか、いろいろと主張があるようですね。
生理的に受け付けない人はやむを得ないにしても、正当な文学作品として評価するというのはどうなんでしょう?
まるで、「インスタントラーメンの中では『ラ王』がうまい」と伝え聞いた美食家かぶれの人が、「こんなもの、スープはコクがないし、メンにはコシがない。器も…」と、本物のラーメンと同じ視線で酷評しているようです。
私もいい年ですので、気持ちが全くわからないわけではないですが、批評をするのであれば、ある程度自分から歩み寄る姿勢を持つべきではないか? と、思います。
作品自体は多くの方が好評価しているように、ライトノベルとしての設定、テンポ、構成、完成度、続編以降に続く世界観の広がりなど、実によくできています。
(ライトノベルの)SFやファンタジーの場合、文字量の関係で怒涛のごとく流し込まれる世界観を消化するだけで労力を消費してしまい、完読前に力尽きてしまうことがありますが、「ハルヒ」は日常の舞台がごく普通の学園生活であり、主人公キョンの「疑いを持った視点」で物語が進んでいるのがミソです。
この視線は、リアルタイムの学生より、すでに何事も起こらなかった学生時代を経験済みの読者の方が実はシンクロしやすいのではないでしょうか?
そういう世代には、ハルヒの「エキセントリックな行動」や現実にはありえない展開がより光って見え、物語に吸い込まれていくはずです。
実際、キャラ「萌え」や、メディアミックスによる販促戦略だけでは、ブームにまでは発展しません。あらゆる視点から考えても、やはり、芯となる原作のポテンシャルが高かったことがヒットの要因であるはず。そのあたりを意識して、ぜひ、読んでもらいたいです。