主人公はタイに住む日本人。部屋はきれいに並べられた本で埋められていて、日本文化センターの図書館で働いていることからとても静かな生活を孤独に送っているという印象。そこに、ヤクザたちが現れ静かで純粋だった世界が一瞬にして汚く、騒々しい世界に変化する。主人公は刺青をしている。多くの登場人物が刺青をしている。刺青の意味は詳しく知らないが、昔、囚人につけたものであるし、最近ではファッションで恋人の名前を彫る人もいる。そこから類推すると、何かを刻み込む(そのままですが汗)という意味があるんだと思う。人間はみな過去に縛られている。映画の中には出てこなかったがおとなしい主人公にも過去があっただろう。その過去のせいだろうか、閉じこもっていた主人公が感じる静かさと孤独、ラストの笑みからこの映画は人生礼賛の映画なのかと思った。
Personal lifetime bestおすすめ度
★★★★★
ペンエーグ・ラッタナルアーンの「6シックスティナイン9」「わすれな歌」に次ぐ日本公開3作目。前作「わすれな歌」のとても寓話的で、次から次に展開する物語の面白さと違い、本作はとても淡々と(魅惑的ともいえる)美しい映像と共にストーリーが進みます。
もちろんこの映画が人によってはジワジワと、まるで三年殺しの様に効いてきて頭から離れなくさせてしまうのは、ドイルの美しい撮影だけではなく、素晴らしいプロダクションデザイン(特にノイの家)、最高に気持ちいいファラムポーン・リディム名義、フォトステッカーマシーン演奏によるテーマ曲「GRAVITY」(04年、青山でのSOI MUSIC FESTIVALでは、フォトステッカーマシーンはかなりイメージの違う、熱い演奏でした)など魅力的な部分が多いからだと思います。
ノイがトリップして本が舞ったり(CGIの使い方がさりげない)、「わすれな歌」でおなじみのトイレへのこだわりなど笑える場面があったり、また「部屋にある死体」が再び登場したりと、監督としての技量、作家としての面白さなどもあって、浅野主演の次回作「INVISIBLE WAVES」への期待も膨らみます。
色んな解釈が可能なエンディングも含めて、タイのモワーッとした空気を思い出したい時につい通して見てしまう、(映画史的傑作とは言わないまでも)私にとっての「ライフタイムベスト」の一本なので、映画好きというよりも仲のいい友達にだけ「見ろよ」と(さりげなさを装って)言うことにしています。
納得の出来
おすすめ度 ★★★★★
非常に素晴らしい一品だと思います
。TOP100ランキングに入っているのでご存知の方も多いと思いますが、
すばらしいものだと感じましたので☆5評価としました。